2%の消費増税に5%の「ポイント還元」する倒錯

池田 信夫

世界の株価が変調だ。ニューヨーク証券取引所のダウ平均株価は、今年(2018年)10月の最高値から20%近く下がり、日経平均株価も一時は2万円を割った。「リーマン・ショック」から10年たち、新たなバブル崩壊に世界のマーケットが身構えているように見える。

そんな中で、政府の2019年度一般会計予算案が閣議決定された。総額は101兆4564億円と初めて100兆円を超え、その中身も消費税の増税対策など、バラマキ色の強いものになったが、マーケットは反応しない。日本経済の問題は、そういう短期的な景気対策では解決できないからだ。

「ポイント還元」は大混乱をもたらす

今回の予算の最大のポイントは、来年10月に予定されている消費税率の8%から10%への引き上げをどう乗り切るかということだろう。この増税対策の中で最も注目されているのは、キャッシュレス決済の「ポイント還元」だ。

これはクレジットカードや電子マネーで買い物をしたとき、小売店などが5%のポイントをつけ、それを政府が補助するものだ。この対象となる事業者は資本金5000万円以下の中小企業に限られ、大手チェーンの直営店では還元しない。個人商店が大手チェーンに加盟するフランチャイズ店では2%還元するというが、消費者には直営店かフランチャイズかなんてわからない。

もともと食品には軽減税率が適用されるので、中小企業でクレジットカードで食品を買うと、ポイント還元5%を含めて7%も軽減される。つまり軽減税率とポイント還元を含めて3%、5%、6%、8%、10%という5種類の消費税率が併存することになる。

さらに問題なのは、このポイント還元の財源が2789億円しかないことだ。これは東京オリンピックまでの時限措置ということになっているが、財源は9カ月も持たないだろう。

たとえば本体価格10万円の冷蔵庫をいま買うと税込み10万8000円だが、来年10月1日に中小の電気店でクレジットカードを使って買うと、ポイント還元で10万5000円に値下がりするので、10月1日に駆け込み需要が集中するだろう。商品券を大量に買って横流しすることも考えられる。

12月4日から始まったスマホ決済アプリ「ペイペイ」の20%ポイント還元サービスの財源は100億円だったが、わずか10日間で終わった。高額の買い物が殺到して財源を使い切ったからだ。日本全国ですべてのクレジットカード利用者を対象に行われるポイント還元が、これよりはるかに大きな混乱をもたらすことは容易に予想できる。

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