スポーツマネジメントの世界:プロもアマも必要なマネジメント力

11月29~30日に「Sport inovation summit 2018(SiS)」が開催され、2日間参加してきました。僕がスポーツマネジメントを最初に意識したのは、10年くらい前、僕の小・中学校の大先輩である池井優慶應大学名誉教授の「日本プロ野球と米国大リーグ」という講演を同窓会で聞いた時でした。

「NYヤンキースは、ヤンキースタジアムのシーズンシート購入者に再契約をお願いするためにやってることがあるのです。何かわかりますか?」

僕は全くわかりませんでした。

「デレク・ジータが直接、シートオーナーに電話をかけるのです」

えー。NYYで一番の人気を誇る選手が直接、営業の電話をかけていると言うのです。正直驚きました。

僕もJリーグ開設時、横浜フュリューゲルのシーズンシートを2年間持っていましたが、前園からの再契約の電話はもらっていません。電話をもらっていたら、契約を打ち切ることは出来ず、3年目も持続していたと思います。スポーツをビジネスと捉えるとマネジメントの力が問われることになると、意識した瞬間です。

次の機会は、行革を担当していた時代に、東京オリンピック後の施設利用に関する議論をしていた時です。施設もスポーツの人気度合いによって、適切なるサイズがあり、入場料収入以外に外収入の見込みがあるかどうかが、大きなポイントになると。オリンピックの為につくった施設にサイズ感の合わないスポーツを無理くりはめても、採算が合うわけがないと…。

こうした過去に思いをはせながら、SiSのシンポジウムに参加したのです。登壇者は各スポーツ界で成功モデルをつくりあげているチームや組織です。サッカー界から、FCバロセロナ、ASローマ。野球界からサンフランシス・コジャイアンツ、シアトル・マリナーズ。バスケットボール界からFIBA。アメリカンフットボール界からサンフランシスコ49ナーズ。

すべからく、ファン獲得に向けてどのような戦略をとっているか、スタジアムでの飲食やグッズ売り上げ向上に何をやっているのか、外国人インバウンド対策として受け入れ対応をどうしているのか。新たなテクノロジーを使い、データを活用し、ITをフル回転させ、アニメで面白さも追求し、正にマネジメント力で売り上げを、利益を追求し、選手の年俸を支えているのです。

日本のプロ選手の年俸が、欧米諸国に比較して明らかに低いのは、スポーツマネジメントの重要性を誰もが理解していないからではないでしょうか。選手OBがそのスポーツをやっていたからという理由で運営に携わっても経営が上手くいくとは思えません。また、親会社の広告塔と捉えていたのでは、大きなお金を稼ぎだすことは出来ず、選手年棒を引き上げる事にもつながりません。選手にとっては、同じ出場時間と努力で、経営母体が稼げないから、選手年棒が低いというのは理解に苦しむはずだし、このままでは、良い選手は日本でプレーする必然性を見いだせなくなると思います。

日本のプロスポーツ界の経営の甘さ、あるいはアマチュアスポーツ界のゆるみを改めて実感したのです。アマチュアスポーツ界は、稼ぐとか、お金とかは二の次という気持ちが先行し、先輩後輩、気合と根性が幅を利かしているのではないでしょうか。選手生命は短く、夢や希望を与えてくれると本当に思うなら、お金を沢山稼げて、社会的地位が向上するような環境においてあげるべきです。それは、運営者のマネジメント力が無ければ、達成できないことだと思います。

SiSのシンポジウムに来て、僕はデータを使い、ITをフル活用し、新たなテクノロージーを常に取り入れたスポーツマネジメントをやってみたいと、本気で思いました。それくらい、日本では魅力的だけれども、未発達の分野と思うからです。選手もセカンドキャリアとして学ぶべきと思うし、自治体職員もプロスポーツチームを誘致したいなら、マネジメントを学ぶべきと思います。

国の違い、ファンの違い、施設の違い、違いを見出して、出来ない理由にすることをもうやめませんか?誰も喜ばない現実を誰も見たくありません。ファンの為にも選手の為にも、スポーツマネジメント力をもった経営に舵を切るべきと思います。

本当に有意義なシンポジウムでしたので、SiSは何年かに1度、日本で継続的に開催してもらいたいと思います。積み上げる事によって、人も育ち、マネジメントの力も向上すると思います。


編集部より:この記事は元内閣府副大臣、前衆議院議員、福田峰之氏のブログ 2018年12月30日の記事を転載しました。オリジナル記事をお読みになりたい方は、福田峰之オフィシャルブログ「政治の時間」をご覧ください。