駄目な軍オタが予測を誤る理由

駄目な軍オタさんたちは将来の予測をよく誤ります。

それはニュートラルにものが見られないからです。
更に自衛隊など当局の言うことを丸呑みするからです。所詮は官僚作文であり、不利なことは認めません。
その裏を読まないといけないのですが、初めから信じたいという願望が入るのでそれができません。

つまり好き嫌いでしか物事を見るとこができない

さらに言えば、予算とか貨幣という概念が理解できない。兵器を調達するのにも、それを維持するにも、それを動かす人間もお金がかかります。兵器買ったら勝手に自分でメンテして、乗員が生えてくるものではありません。

そして防衛費には上限があり、優先順位が必要であり、すべての予算が欲しいだけ取れることはまずありません。つまり予算編成というものは何かを諦める、という作業でもありますが、それが理解できない。

また軍事といっても広い分野ですので、政治、外交、歴史、科学技術、経済など隣接する分野に対する素養も必要ですが、駄目な軍オタさんたちはそれが理解できない。

そして現実を見る勇気がなく、対して知識や見識がないのにそれを認めようとしない。自我が極度に肥大しているからでしょう。

だから国産戦闘機開発と大綱に書かれたら、国産戦闘機開発ができると大喜びします。
ですが装備庁や我が国の航空産業現実を冷静に見ればそれは不可能だし、出来たとしても
値段だけは高い低性能な機体しかできません。

自分が好きというのが根底にあるから、それにそぐわない意見やエビデンスは曲解してまでも否定します。恋は盲目というやつです。

無論、将来予測にしても、技術的には正しいもの採用されないこともありますが、それも理解ができない。

90年代にぼくは将来の装甲車輛は装輪装甲車が主流になると「予言」しました。
それに対して装輪厨とか批判がありました。

96式装輪装甲車(Wikipedia:編集部)

現実はどうでしょう。ほとんどの装甲車輛は装輪になっています。

確かに装軌車輛は不整地に強く、重い火砲なども搭載できます。その好例はMBTでしょう。

ですが、ソ連崩後は大抵の国で、予算がタイトになりました。

装軌車輛は大抵調達コストも高く、維持費用は装輪の約3倍と言われております。
その上前線での装備は難しく、PKOなどの任務には向きません。

また長駆の移動にはトレーラーとその乗員が必要です。これまた大きな予算がかかります。
自衛隊のトレーラーは悲しいほど少ないですが、他国でも苦労しています。

コストの面から装輪装甲車の優位は圧倒的です。

装輪装甲車の不整地装甲能力も、70年代ぐらいから見れば大きく改善しています。
タイヤの大型化、8輪などより多くの車輪を使う、独立懸架式サスペンション、タイヤ圧調整装置様々な技術的な挑戦が実を結んでいます。必要は発明の母ということです。

例えば同じ予算で装輪装甲車が、200輛買えるところ、装軌車輛が100輛だとしましょう。
そして稼働率(整備予算の捻出も含めて)装輪が8割であれば160輛が可動可能、対して装軌式は5割ならば、
50輛。200輛の装甲車輛が必要だとすると、1/4しか実質手に入らない。

常識的に考えれば不整地での運用能力などのデメリットがあるにしても、装輪装甲車が選ばれるのは当然です。

またなぜ車体や維持コストを下げる必要があるかというと、ネットワーク化やセンサー類の高額化が挙げられます。この点でも自衛隊は大きく劣っているわけです。

更に申せば、欧州正面では大規模な機甲戦闘の可能性は低くなり、PKOや非対称戦争が主たる任務です。
この点でも装輪装甲車にアドバンテージがあります。

一見突飛な見解でも実は有効なものは少なくありません。
機甲戦も戦略爆撃も当初は異端扱いされました。

新しい技術や戦術に関しては、多くの軍人や専門家ですらも理解できない現実があります。それは歴史を見れば明らかです。

軍事に限りませんが、将来を見る場合、固定概念を持たないよう努力し、広い視野をもって、周辺情報も把握することが極めて大事だと思います。

■本日の市ヶ谷の噂■
海自は次期大綱で、UH-Xの調達をしない。既存のヘリで行うとのこと。つまりDDHの補給効率や交換用エンジンの輸送、いじめ隠蔽するように隊員の命軽視のためか、哨戒機などの救難は諦めるとの噂。

独 European Security and Defence 誌に寄稿しました。(英語)

Japan in Depth に以下の記事を寄稿しました。

装輪155mmりゅう弾砲は必要か 上
装輪155mmりゅう弾砲は必要か 下


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年1月4日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。