AbemaTVの橋下徹の即リプ!という番組の#21:乙武洋匡はなぜモテる!?小学校の教育システム改善を提案!!で、橋下さんが三角関数の教育が不要なのではないかという持論を述べて、ネット上で物議を醸しています。それに対して、橋下さんが、こんな反論をTwitterに書いていました。
広く浅く知識を学ばせることは必要でしょうが、今はあまりにも「死に知識」が多いシステムですね。やはり大まかにでも職業教育を行い、自分の進路をある程度見定めて必要なことを徹底して勉強していく。進路を変え、学び直せることも自由なシステムに。興味がなければ勉強は進みませんね。
— 橋下徹 (@hashimoto_lo) 2019年1月5日
私も三角関数の知識は絶対に必要だとは思えませんし、現在の教育に『死に知識』教育が多すぎるという、橋下さんの意見に「よくぞ、言ってくれた!」と大変共感しました。
そこまで共感したのにはわけがあります。私は専門家でも何でもありませんが、国民の一人として、日本の教育機関は、三角関数の知識に関わらず、『死に知識』を売る、場合によっては詐欺に近いような産業になっている気がしていて、非常に良くないと感じているからです。この事について、もっと世間は議論すべきではないでしょうか?
例えば、大学で英語の他に、第二外国語を学ばなければならなかった人は、大勢いるでしょう。しかし、どれだけの人が、その大学の第二外国語の授業がキッカケで、その言語を話せるようになったのでしょうか?私の周りに優秀な人がいないだけかもしれませんが、ほぼ、皆無という印象しかありません。
これは、大卒という多くの人が欲しがる物を販売している大学が国とタッグを組んで、学生の足元を見て、明らかに、必要じゃなさそうな『死に知識』を押し売りしているだけの構図にしか見えません。しかも、若者はお金を巻き上げられるだけではなく、貴重な時間とエネルギーも吸い上げられてしまうわけです。
こんな仕組みで、別の業界の会社が商売しようとしたら、どうなるでしょう。例えば、大卒の資格以上に、多くの人が欲しがる『移動』を販売している鉄道会社が、同じ構図で商売しようとしたら、こんな感じだと思います。
最近は、線路への飛び込み自殺が増えているなどの理由を掲げて、電車の切符を買うには、心理学講座の受講を必須にします。しかも、それは高額で、身にも付かず、通勤前に開講されてしまいます。そんな時間とエネルギーとお金を、かなり奪われる『死に知識』の押し付け商売を鉄道会社が始めたら、世間は激怒するでしょう。
こんな感じで、教育業界では、他の業界に置き換えたら絶対に成立しない、あくどい商売が、いくつも、まかり通っていると感じます。追加で、さらに例をあげましょう。英検一級を持っているような学生が、授業料・時間・エネルギーを負担して、学校の英語の授業に参加しないと卒業させないなども、おかしな『死に知識』販売業だと思います。
また、『死に知識』であっても、何らかの知識を得られればマシですが、学校という組織は、何も教えない事すらあります。例えば、一般的なマラソン関連の本には、いきなり、何の知識もない人が無理やり長距離を走る事は禁物と書いてあります。そして、走りたい人は、マラソンに関する知識を得た上で、体力にあったトレーニングをするべきと書いてあります。
しかし、多くの学校で、未だに、たいした指導もなく、生徒の体力・体調なども考慮せず、いきなり『マラソン大会だから10キロ走れ!』と生徒に強いたりしているようです。こんな指導しかしない、大人向けのマラソン教室があったら、大騒動になるレベルなんじゃないでしょうか。
さて、日本人は自分の精通している知識を知らない人を、小馬鹿にする傾向があるように感じます。例えば、クイズ番組に出演するスポーツ選手が漢字が苦手だったりすると、小馬鹿にして笑っている人もいるわけです。しかし、そういう人は、『死に知識』ばかりで、漢字の知識が上回る自分が、漢字学習を切り捨てたスポーツ選手ほど活躍出来ていないという事を笑おうとはしません。
今回、私のように橋下さんの意見に共感し、三角関数が不要と発言する人を、小馬鹿にする人をネットで見かけました。言いにくいですが、そういった人は、スポーツ選手の漢字力を小馬鹿にしている人と大差はないと思います。三角関数が、それだけ得意なら、持ち前の数学的、あるいは論理的思考で、現在の教育機関が抱える『死に知識』の販売という問題にメスを入れる議論を欲しい気がします。
※この記事の著者プロフィール
渡辺龍太 (放送作家 アドリブトークの専門家)
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著書:『ウケる人、スベる人の話し方』