みなさま、あけましておめでとうございます。実は、私は亥年生まれ、年女です。平成最後のお正月を迎え、平成の30年間を振り返り、2019年がどのような年になるか、何に取り組みたいか、年末に書き始めたのですが、なんだかんだと忙しく年明けになってしまいました。12月は「師走」(忙しすぎて師匠も走る)とはよく言ったものです。
まあ、そもそも対象が大きすぎたのが間違いでした。ということで、取り上げたい論点は山のようにありますが、亥年生まれのおかげで産経新聞のインタビュー(亥年国会議員に聞く)に来年の国際情勢や抱負を載せて頂いたのですが、字数の都合で伝えきれなかったこともありますので、とりあえず、そこで取り上げられた挙げた点を中心に書いてみます。
1. 歴史の転換点
まず、本年は後世の歴史家が大きな歴史の転換点と振り返る激動の年になると確信しています。
平成元年は1989年、ベルリンの壁が崩壊して、「冷戦の終わり」が始まった年です。ちょうど私は大学1年生で、実はベルリンの壁崩壊に感動して、外交官か国際政治学者になろうと決意したことを思い出します。そして、奇しくも平成の終わりの今、我々は、米ソから米中にプレーヤーを変えて「覇権争い」を目の当たりにしています。
正確には、この歴史の転換が顕在化したのは少し前、2016年の英国のEU離脱にさかのぼると考えます。そして、転換の内実は、①グローバリズムへの懐疑と②米中のパワーバランスの変化による覇権争いに集約されるかと。
変化というのは一晩で突如起こるものではなく、変化は少しずつ長い時間をかけて起きてきたのです。ポタポタ落ちてきた雫がある日コップ一杯に溜まって外に溢れ出して始めて気づくというようなものであり、そのコップの水から溢れた最初の1滴がEU離脱だったと思うのです。欧州で二大政党制が崩れ始め、グローバリズムの懐疑や移民排斥を主張する「極右」と呼ばれる第3政党が支持を集めていました。EU離脱は原因ではなく結果ですが、其の後の様々な変化を誘引したという意味では原因でもあります。
さて、現在の国際政治の最大の激震地は米中関係ですが、より深刻な変化は、どの国にとっても、既存の国際秩序やルールがもはや当たり前ではなく「なんでもあり」の世界になってしまったということだと思います。みんなが守るべきと信じるルールや枠組みの力が減って「力による政治」の時代になり、従来では予期しないような変化が起きやすくなっていると感じます。
第1次世界大戦と第2次世界大戦の戦間期について書いたEHカーの「危機の20年」を久々に読み返して、現在との近似性に身震いしました。それまで当たり前だと思っていたルールや秩序があっという間に変わっていく様にです。
2. 米中の覇権争いの行方
昨2018年7月6日から米中は高関税合戦が始まり、10月のペンス副大統領演説は、米中冷戦の「鉄のカーテン演説」ともいうべきものでした。年末近くなっては、ついに米国は華為副代表逮捕に踏み切り、米国政府の華為調達禁止が同盟国に広がるなど、「中国製造2025」を明確なターゲットにしてテクノロジーの覇権を渡さないためには、なりふり構わなくなりました。それだけ米国の危機感が深いということで、米中の覇権争いはさらに激化するでしょう。
中国は既に極めて高い技術レベルを備えつつあります。が、まだ、コア技術で米国に勝てない部分は残っています。だからこそ、米国は、今やるしかないと考えているのです。しかし、依然からブログで書いてきたように、中国は既に自前でイノベーションを起こすエコシステムを備えつつあるように思います。中国のITとモノ作りのメッカ深圳を視察してさらに確信が深まりました。高い技術水準、高いレベルの若い人材、それを強烈に後押しする政府、個人情報保護など気にしなくてよい15億の市場・経済体。それに、チャレンジ精神が旺盛なリスクテ―カーで意思決定が速いところなど、中国人は、米国人とよく似ています。
同盟国や準同盟国などを総動員すれば、米国が中国にテクノロジー覇権(つまり次世代の覇権)において優位に立ち続けることはできると思いますが、それは中国が強大な国であり続けることを否定するわけではありません。相当長い期間、たとえばあと50年、米中が拮抗する関係が続くのではないでしょうか、まるで米ソ冷戦が50年弱続いたように。むしろ、米国の勝利は、その「闘争」の結果として、中国がいつのまにか世界が脅威を感じない体制に事実上変化させることができるかどうかなのかもしれません。究極には、共産党体制の変更・崩壊ということでしょうけど。
米国は中国に依存しない経済を作り、中国は米国に依存しない経済を作り上げることになります。
日本や欧州やASEAN諸国などその他の国は、両方と取引をすることになるでしょうが、米国が中国との取引をやめるように圧力をかけてくる事態も考えられます。その意味で、日本がTPPを主導し、欧州とEPAを作ったのは非常に先見の明のある戦略的外交であったと思います。
米中の覇権争いは、覇権についての決着がつくまで続くでしょう。共産党独裁が事実上崩壊するということです。米中が互いに「負かしきれない」と判断すれば「手打ち」もあると思いますが、それは、米中間で相当な泥仕合が十分になされた後のことです。その時世界がどうなっているのか。
米国が中国との覇権争いに真剣に勝とうとするなら、同盟国や友好国を大事にすべきです。米国の最大の力の源泉は、自発的に米国に同調し協調する多くの国がいるということ、つまり「実のあるリーダーシップ」だったのですから。しかし、米国はイラン核合意や貿易摩擦で欧州やカナダまで遠ざけ、本来発揮できるリーダーシップをオウンゴールで減らしてしまっています。
そして、米国が中国との覇権争いに最終的に勝利するためには、米露関係も改善すべきです。中露は別に同盟関係でもなんでもありません。本来的にはユーラシア大陸を分け合うライバルです。でも、米国が中露を敵に回せば中露は便宜的準同盟関係になるわけで、それが現状です。ロシアは米国の真の脅威ではありません。ロシアは経済力がない。国力は衰退こそすれ伸びていくような感じがありません。
しかし、政治力はあり邪魔はできるのです。ですから、ロシアと中国が共同歩調をとらせることは避けるべきです。米ロ協調ができれば中東問題も負担が軽くなります。とはいえ、現時点では米国にとってロシアは敵対的な国でしょう。特に、トランプはともかく米議会や国防省などは。ですので、本年かどうかはわかりませんが、今後、米国が対ロ政策を変更するかどうか注目したいと思います。日露交渉にも影響するでしょう。
3. 日中関係
日本は米国の同盟国だから当然という以上に、それをさておいても、日本にとって米国の覇権の方が中国の覇権よりも好ましいことは明らかです。というか、現体制の中国の覇権は日本にとっては受け入れがたいものとなるでしょう。他方、米国と異なり、日本にとって中国は、安全保障面での脅威であると同時に、地理的に近接する隣国であり、人口15億人の大きな市場であり、最大のインバウンド(訪日外国人客)元です。
したがって、日中関係は、脅威をヘッジしつつ、マネージ可能な生産的なものとしていく必要もあります。安倍晋三総理の訪中により、マイナスだった日中関係は正常化の軌道に乗りました。中国も米国との関係が難しいからこそ、日本に対して融和的になっています。しかし、米中関係が悪化すればするほど、日本も対中政策の余地が減っていくことになります。
4. 日本の役割~大阪の時代
日本外交も安全保障政策も、今までの延長線上では持ちません。自分自身で戦略を立て自分の身を守る工夫が今まで以上に必要です。同盟疲れしている、アメリカ・ファーストの米国だからであり、実際問題として、米中のパワーバランスは拮抗に向かっており、米国頼みだけでは、日米同盟が持たないだけではなく、日本自身が困ることになるからです。日本の防衛力を強化するために取り組んでいきます。
日本の役割は、日米同盟を基軸にインド太平洋戦略を展開しつつ、国際協調の枠組みを価値と戦略を共有できる国との間で再構築していくことです。
その意味でも、本年6月に、私の地元、大阪で開催される20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)にて、日本が果たす役割は大きい。主要国の中でトランプ米大統領が聞く耳を持つトップリーダーは安倍首相だけ。国際政治をマネージする役割を果たすことが期待されます。
G20に加え、2025年国際博覧会(万博)の大阪開催も決まり、本当に、「大阪の時代がきた!」と気持ちも盛り上がっています。2年前の自分の参議院選挙時から「世界都市OSAKAの実現!」を掲げてきた私としてこれ以上嬉しいことはありません。経済効果、インフラ整備だけでなく、大阪と関西の魅力を世界に発信するチャンスです。万博は、関西圏のみならず日本全体にとって重要です。東京オリパラ後の日本の次なる目標となり、また、東京一極集中を解消して大阪を中心に関西圏が日本のもう一つの柱となる起爆剤になります。誘致は成功しましたが、これからは、大阪選出の議員として、万博が成功するように取り組んでいきたいと決意しています。
5. 朝鮮半島
朝鮮半島との関係は、難しくなります。北朝鮮の核問題解決は遠のいていますし、日韓関係は崖っぷちです。韓国は建国を「1919年」にしようとしており、今年が100周年です。「抗日」を南北融和のためにプレイアップする可能性は高い。慰安婦財団解散、旭日旗、竹島上陸、直近では、レーダー照射事件と日韓関係は悪化の一途をたどっていますが、何よりも、旧朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる元徴用工問題)は他の反日案件とはマグニチュードが違う深刻な問題です。韓国に目を覚ましてもらわないと、健全な日韓関係はありません。
いずれにせよ、ムンジェイン政権の間はどうしようもありませんので、日本の方から日韓関係に多大なリソースをつぎ込んでも仕方ありません。そう、問題は、日韓関係というより韓国自身なのです。経済状況も悪く、米韓関係、日韓関係も不調です。マティス長官辞任もあり、在韓米軍の縮小撤退という事態にならないか懸念しています。日本にとっては朝鮮半島に米国が関与し続けることこそ国益です。そういう観点から、日朝を開始することは多いにありだと私は思います。
6. 少子化対策:男性育休の義務化
それから、度肝を抜くような少子化対策に取り組みたい。子供を産むインセンティブを上げることは国家の生存戦略、成長戦略として捉えるべきです。子供が増えると思えば、外国は日本はこれから成長すると考える。外交力や国債の価格にも影響します。
私は絶対に子供を産みたいと思ってきましたが、それでも1人目を産んだときには「もう十分」と思いました。私にばかり負担がかかるからです。結局、2人産みましたけど(笑)。家事育児のフェアな分担なくして子供が増えるはずがない。男性の育休は義務化すべきだと思います。男性の議員の中にも義務化を提案される方がいて大変勇気づけられました。こうした方とご一緒に取り組んでいきたいです。
今時の若い男性は既に意識も変わりつつありますが、それでも、育休は、パパスイッチを押し、家事と育児を本格的に経験する良い研修の意味があるからです。
なぜ義務化かといえば、スウェーデンもうらやむ素晴らしい育休制度がありながら、未だに男性の取得率は3%代にしか増えておらず、その理由が、「男のくせに育休か」という上司や、育休を取らない男性とのキャリア差を気にして取りたくてもとれない状況にあるからです。
義務化すればこうした問題はフラット化され解決されます。嬉しいことに同じ考えの男性議員もいらっしゃいます。
子供を産むのが劇的に「楽」で「お得」にならないと、産む気にならない。ちまちましたことではハートに刺さらない。この現実を前提に政策を考えなければ。例えば、少子化を遅らせるのに必要な出生数を科学的に算出して目標を定め、「今後10年間に限り3人目を産んだら500万円もらえる」とか(目標が達成されたらその時点で打ち切っても良い)、財政負担もあるので時限的に実施で良いのですが、早くやらないと間に合わない。
なぜなら、出産可能な女性の数が減少してしまってからでは、いくら1人の女性が3人以上出産してもトレンドを変えることは著しく困難になるからです。つまり時間が立てばたつほど「手遅れ」になるわけです。
これは女性の生き方について押し付けとかそういうことでは全くありません。今時、この成熟した日本社会において、男性も女性も関係なく、自分のしたいように人生を生きるべきです。日本で産みたいと希望する人が産めば十分将来は明るいのです。でも、余りにも負担が大きく割りに合わないから産みたい人が希望通り産むことができない現状があります。この現状を変える最大限の努力をすべきです。
少子化のトレンドを変えないと、日本の将来は厳しいものがあります。あらゆる手段を尽くすというなら、今やらないでいつやるの、という話です。問題意識を共有する仲間とこうしたことに取り組んでいきたいです。
そのためにも、統一地方選、参院選で自民党が勝利して安定した政権運営が継続できることが不可欠ですから、勝利に向け私も精一杯取り組んでまいります!
編集部より:このブログは参議院議員、松川るい氏の公式ブログ 2019年1月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は、「松川るいが行く!」をご覧ください。