久しぶりに「みっともない憲法」論を目にした。
「こんな人たち」と「みっともない憲法」の克服を — 高山 貴男
護憲的改憲論の私からすればおよそ取り上げるほどの価値もない暴論のように聞こえるが、この言葉が安倍総理から発しているということになると、さすがに聞き捨てならない。
どこかで安倍総理が日本国憲法をみっともない憲法だと発言したことがある、ということのようだが、憲法尊重義務がある日本国の総理大臣が本当にそういう発言をしたということであれば、その不見識はどんなに責められても仕方がない。
嘘でしょう、と言いたくなるが、安倍総理が憲法改正の必要性を分かりやすく、かつ情熱をもって語るためにそういう表現を取った、ということはどうも否定出来ない事実であるようだ。
アメリカでは日本の憲法はアメリカが作ったと認識している有力な政治家がそれなりにいるようだから、日本の政治家がそういうアメリカの有力な政治家の認識を受けて、日本の憲法は日本人が作った憲法ではない、アメリカから押し付けられたみっともない憲法だ、などと卑屈になる気持ちが分からないわけではないが、大方の国民は日本の憲法はそれなりにいい憲法だと教え込まれ、現にそう信じている方々が多いはずだから、自分たちが大事にしている日本の憲法がみっともない憲法だなどと蔑まれて、いい気持になるはずがない。
安倍総理の本音がどこにあるのか、安倍総理が「みっともない憲法だ」などと思わず口走った本当の理由がどこにあるのか、等をしっかり見詰め直した方がよさそうである。
確かに、アメリカが現在の日本の憲法の原案を書いた、という事実があり、これを以てアメリカが日本の憲法を書いた、と主張するアメリカの政治家がいてもおかしくはないが、実際には日本の国会(当時の衆議院と貴族院)で審議され、数次に及ぶ修正を施したうえ、大日本国帝国憲法の定める憲法改正手続きに基づき、枢密院での諮詢を経て、日本国の天皇が公布しているのだから、日本の憲法はやはり日本の憲法であって、決してアメリカの憲法などではない。
日本の現在の憲法を、みっともない憲法だ、などと卑下する必要は毛頭ない。
日本国憲法無効論などを信奉される方々は、日本の憲法をみっともない憲法だと思っておられるのかも知れないが、色々問題を内包していても、日本の憲法はそれなりにいい憲法である。
日本の憲法を聖典化したり、過剰に美化する必要はないが、日本の最高法規範であることには変わりがないのだから、それなりに敬意をもって向き合うべきである。
編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2019年1月6日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。