電子攻撃機の開発は、昨年12月に閣議決定した防衛計画の大綱の内容を具体化するものだ。大綱は「(日本への)侵攻を企図する相手方のレーダーや通信等の無力化」を可能にする態勢の強化を掲げており、自衛隊は来年度から開発に向けた作業を本格化させる。
具体的には、航空自衛隊の輸送機「C2」と海上自衛隊の哨戒機「P1」に電波妨害装置を搭載した型を開発する方向だ。C2を基にした機種は2027年度の導入を目指している。P1については開発スケジュールを含めて検討する。
P1は操縦の制御に、妨害電波の影響を受けない光ファイバーを使用している。電気信号を使う他の航空機に比べ、電子攻撃機として高い能力を発揮することが期待されている。
海空自衛隊でそれぞれ別個のプラットホームを使った電子戦機を使う必要があるんでしょうかね?
確かに海空、それぞれP-1、C-2と整備ができるメリットはあるでしょう。
ですが、両方共プラットホームとしての魅力はあまりない。専用機体であるがために調達、運用コストが高いという欠点があります。C-2は特に機体が大きすぎるのではないでしょうか。つまり、既存機材の派生型であるメリットを超えた、デメリットがあるのではないでしょうか。
邪推をすればそれゆえに財務省からP-1、C-2の調達数を削れと圧力がかかっているから機数を確保したいという思惑もあるでしょう。
ですが、機体の調達コストもさることながら、維持費が大きな負担になっているのが現実です。10年以上前からP-3Cですら整備予算がなくて共食い整備をしている状態ですから、より機体、システム、エンジンが全部専用で調達コスト、維持費が高いP-1がどれだけ予算を喰うことか。
例えば空海両方共民間で使われている旅客機、例えばボーイング737、エアバスA320あたりに統一して開発すれば調達コストも運用コストも下げられるはずです。
国策でMRJを支援するならばMRJを選んでもいい。航続距離は燃料タンクを増設すればいいでしょう。我が国全体の航空産業の振興という面をみればそれも検討すべきです。
恐らく、こういう旅客機を採用するという案をはじめから真面目に検討せずに、P-1、C-2の派生型ありきで話が始まっている気がします。
電子戦機で1番のキモはシステムです。機体に余分なカネをかけるならば機体にかけるカネを減らし、その分システムに振り向けるべきです。
コストを抑えるならば海自のP-3Cの近代化もあるでしょう。主翼、エンジンを取り替えて、グラスコクピットを採用すれば機体寿命はほぼ新品と同じになり、燃費、整備性も大幅に向上します。何より、整備、訓練支援施設などは既存のものが流用できます。80機もあるP-3Cを、カネを掛けて廃棄するよりはるかにマシではないでしょうか
自衛隊全体としての調達、運用コストの提言、統合運用という観点から、様々な案を真摯に検討すべきです。
ですが、防衛省は組織防衛と既存の防衛産業の利権防衛を第一に考えすぎます。自分たちの使っている予算は国民が払っている税金が原資であることを常に考えるべきです。
■本日の市ヶ谷の噂■
陸自のAH-Xでは三菱重工とロッキード・マーティンは既存のUH-60JA の武装化を提案するも官側は新造機を希望。その場合調達単価75億円程度でAH-64E同等あるいはそれ以上になるとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年1月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。