若いということは素晴らしい。
そのエネルギーは羨ましくもあり、これからの日本を作っていくための原動力ともなる。
沖縄の若者には、ウチナーンチュとしての地元愛もあるのだろう。
しかし県民投票は、イギリスやイタリアが冒した政治の失敗を彷彿とさせる。これらの国で行われた国民投票は、結局、政治の混乱、ポピュリズム政治の復活を呼び覚ましただけに終わった。なぜなら、国民投票という制度は、争点をあまりに単純化させるからだ。
このことは、昨年発売された『アフター・ヨーロッパ』という本に詳しい。薄い本なので、一日二日で読むことができる。まだお読みでない方は是非読んでほしい。ヨーロッパ政治が、日本の数歩先を行っていて、より複雑で困難だということがよく分かる。
これらの国では、EUからの撤退や政治改革の選択を「国民投票」に委ねた。当時の国政の中枢にいた者達は当初、自分たちの主張の正当性を信じ、国民の「常識的な」判断に信頼を寄せていた。しかし結果は、ご承知の通りである。なぜなら、設問があまりに単純すぎた、または、複雑すぎたからである。
つまり、国の行く末を決定するのに、直接民主制はあまりにも単純化され、エキセントリックになりやすいのである。その結果、イタリアのレンツィは退陣し、イギリスのメイは国民投票の結果に従いBrexitを決定するにあたり未だに苦慮している。そうしてEUは各国が次第に内向きになり、ナショナリズムがいたるところで表出している。
沖縄が県民投票をするなら、そして国政政党である立憲民主党や国民民主党がそれを後押しするなら、その設問は多岐にわたるものとすべきなのである。もちろん、沖縄県は単なる自治体であり、外交や国の安全保障に責任を負ってはいない。
だが、国民政党が県民投票をすすめるならば、相当の覚悟と責任が必要だ。タレントが署名を呼びかけるのとは訳が違う。
①普天間を固定化して辺野古移転に反対するか
②普天間を除去して辺野古に移転するか
③普天間からも辺野古からも基地を移転するか
せめてこの程度の設問は用意すべきだ。
そして、③については、鳩山由紀夫総理が、散々、県外地域移転を模索したが、どうしてうまくいかなかったか、ということの説明を私たち国民は全く聞いていない。このことも、枝野氏は説明すべきではないか。オバマ大統領が鳩山氏に激怒したことも新聞報道でしか知らされていない。
国民は、枝野氏に聞きたいのである。
鳩山総理が「トラストミー」と言ったことで日米関係にひびが入ったことをあなたはどう考えているのか(鳩山由紀夫氏の説明だと、トラストミー、と言ったのは、早期解決を約束しただけだった、とか、パンケーキをすすめられたがお腹いっぱいでもう食べられません、という意味だったということだが)。
その間に、韓国資本が、ヘリテージ財団始めアメリカの強力シンクタンクに多大な投資を行い、米上院下院議員に猛烈なロビイング活動を行ったおかげで、第二次安倍政権当初はホワイトハウスにおいて韓国勢に全く歯が立たなかった。そのことについてどのような責任を感じているのか。
現在、安倍政権が必死の思いで日米関係を回復させたことをどう評価しているのか。
辺野古移転を再び妨げて、日米関係をどう維持するつもりなのか。
日米を捨てて、我が国を中国や韓国、北朝鮮と同盟国とするつもりなのか。そこにどのような展望があるのか。
佐藤優氏が先日どこかで対談されていたように、琉球が独立した方がいいと考えるのか。
枝野氏も、玉木氏も、小沢一郎氏も、これらの疑問に全く答えてくれない。これは政治家の怠慢ではないだろうか。私たち国民は、ただ知りたいだけなのに。
教えてよ、本当の言葉を。
河井 あんり 広島県議会議員(広島市安佐南区選挙区、自民党)
慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 修士課程修了。(財)海洋科学技術センター(現・海洋研究開発機構)地球フロンティア研究システム、科学技術振興事業団(現・科学技術振興機構)、広島文化短期大学非常勤講師を経て、2003年初当選(現在4期目)。公式サイト。