英国議会下院は日本時間16日早朝に欧州連合(EU)と合意したEU離脱案を採決、投票結果は賛成202票、反対432票となり、政府の離脱案は歴史的大差で否決された。労働党のコービン党首はメイ政権に対して内閣不信任案を提出すると表明したが、こちらも否決されるとみられる。
これにより英政局の混迷がさらに深まることになるものの、最悪の事態となりうる合意なき離脱については、以前に比べて可能性は後退しているとみなされているようである。それでは今回の英国議会で離脱案が否決された場合に、3月29日とされている離脱期日までにどのような手段が残されているのであろうか。
ここにきての複数の世論調査で、残留を求める声が離脱論よりも多くなってきていることから、2度目の国民投票を求める声が強まっている。しかし、3月末までに国民投票を行うにはスケジュール的に無理がある。離脱期日の延期についても、よほどの事態とならない限りはEU側が認めないと思われる。
しかしながら、混乱を避けるために多少ながらEU側が譲歩するかたちで、議会での2回目の採決に向かう可能性も指摘されている。英国がEU予算を分担することで単一市場へのアクセスを保てる欧州経済領域(EEA)加盟という手段の可能性もありうるか。しかし、これも英国議会が承認するかとなれば疑問は残る。
いずれにしても英国市場は比較的冷静となっている。英国債も多少買われたがそれほど大きな動きはない。ポンドも現状は比較的しっかりしている。また欧州市場や米国市場も同様で、今回の英議会でのEU離脱案の否決は織り込み済みか。今後はメイ首相の次の一手に注目が集まるのではないか。ただし、合意なき離脱の可能性が強まることになれば、金融市場ではリスク回避の動きを強める可能性はある。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年1月16日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。