小池さん、また“乗っかろう”とした?バンクシーの件

小池知事のツイートが波紋 バンクシー?の絵めぐり(日本経済新聞)

正体不明の路上芸術家、バンクシーの作品に似たネズミの絵が東京都港区の防潮扉に描かれていたことに関し、東京都の小池百合子知事のツイートが波紋を広げている。

小池知事は17日、自身のツイッターで絵と共に写った自身の写真を投稿し、「東京への贈り物かも?」とツイート。これに対し「公共物への落書きを公認するのか」「バンクシーは権力者への風刺を描く。喜ぶべきではない」など批判を含め、1万件以上の反応があった。

小池氏ツイッターより:編集部

小池都知事に一貫する、美味しいネタに“乗っかろう”体質

正直、小池都知事の”乗っかり”事案について指摘するのは気が進まない。

どちらにしても、あまり気持ちの良い話にならない気がするからだ。

しかし彼女の”乗っかり力”を侮ると、破局的な事態を発生させる教訓(下記過去記事をご参照ください)から、最低限の指摘をしておきたい。

秋月涼佑 過去記事

・「メンタル強すぎ。小池都知事とすしざんまいが、初競りジャック
・「べらぼう価格の海鮮丼に、豊洲市場観光化戦略の中途半端を憂う

そもそも、小池知事自身が散歩していて偶然見つけたわけではないですよね。

知事会見のコメントを見る限り、この落書きは小池知事が散歩していて見つけたわけではないようだ。

(というかあの辺を毎日ジョギングしてもなかなか見つけられないと思う。あの場所、あの絵は。)

都庁の然るべき部署から上がってきた情報から見に行くことを判断したはずだ。

見に行くという判断がもっぱら公益のためならば良いのだが、小池氏の場合往々にして私的なパフォーマンスではないかと思われることが問題なのである。

確かに、都市の魅力にとってアートの位置づけが重要なことに異論はないだろう。アジアの都市を含めて世界的にパブリックアートに力を入れている都市は非常に多い。都市ではないが、日本にも瀬戸内海に浮かぶ離島で展開されているベネッセアートサイト直島のような素晴らしい成功例がある。

またレベルの高い美術館が観光推進にどれだけ貢献するかは、ルーヴル美術館や大英博物館、ニューヨーク近代美術館(MoMA)などの例を出すまでもないだろう。

かつて東京都現代美術館が開館に向け、リキテンスタインの「ヘアリボンの女」を6億円で購入することに対して批判の嵐が起きたお寒い環境の東京都においてこそ、都知事に期待したいことは山ほどある。

しかしながら、アート領域で小池都知事のリーダーシップでかつて何らか推進されたというような話は寡聞にして聞かない。例えば今回のようなスプレーなどを使って壁などに描かれた落書き”グラフィティ”だけでも、解禁特区を作るなど(行政主導では、バンクシーは参加しないだろうが)いくらでもアイデアはあるはずだが、そんな話はあっただろうか?

その挙句がこの騒動である。

都知事が“炎上上等”でどうするよ。

つまり、公務で得た情報を“美味しい”と判断して、自分の広報活動を行ったわけである。まあ毎度のことではあるのだが、今回は“弘法にも筆の誤り”、意外やちょっと炎上しちまったぜ。というところだろう。

インスタ映えを狙って、立ち入り禁止の場所で撮った写真をアップして怒られる芸能人と、構図は大して変わらない。

彼女に都知事としてのアート推進の意図があれば、少なくともツイッターで発信する時点で、都としてのグラフィティアートに対する方向性を示すなど(個人的には小池都知事が、都は100%グラフィティ解禁しますと宣言したら、そのファンキーな男気を熱烈支援するのもやぶさかではないかも?)するだろうが、案の定そんな訳はない。

これならまだ、トランプ大統領のほうが良い悪いは別にして自分の政治的主張をツイッターで発信するのだから、こと政治家としてはまともな気がしてしまう。

つまるところ、小池氏の今回のツイッターは、“私ってグラフィティにまで理解がある素晴らしい文化的素養があるのよ。再選よろしくね。” という、メッセージに過ぎないのだ。

頼むで、ホンマ

あの素敵な笑顔と強いメンタル、そして、どんなに厳しい状況であっても絵柄的に”この人が悪人のはずがない”という印象づくりにだまされてはいけない。今回は、さすがにネット上で違和感を持った人が多かったようで少し安心した。

(アゴラでも議論されていますね)
バンクシー落書きからみえる小池知事の焦り:柳ヶ瀬都議
焦っているのは小池さんでなく柳ヶ瀬さん:早川忠孝氏

問題なのは、ジャーナリズムと都議会の及び腰だ。確かに小池知事当選当初の“悪代官たちに邪険にされる清廉なジャンヌダルク”でボコボコにされたトラウマはわかるが、もういいかげん頼むで、ホンマ。

秋月 涼佑(あきづき りょうすけ)
大手広告代理店で外資系クライアント等を担当。現在、独立してブランドプロデューサーとして活動中。