南米で革命を。ベネズエラを救え

南米にベネズエラという国があるのをご存知でしょうか?私も昔、プライベートジェットでブラジルに向かう際、給油で降り立ったことがありますが、その当時は南米屈指の富裕国、今じゃ、世界最悪級の経済破綻国となってしまいました。

南米大陸の北端にあるこの国は石油資源が豊富で埋蔵量は世界一とも言われます。しかし、石油産業にかかわる国民、0.5%しかその恩恵を受けていないとされ、一般国民の高い不満とともに生まれたのがウゴ チャベス政権でした。1999年のことです。ところが独裁政権を貫き、反米を掲げ、隣国のコロンビアとも絶縁関係をするなど社会主義政権とは思えない無謀ぶりを断行します。

チャベス体制を引き継いだニコラス・マドゥーロ大統領(Wikipediaから)

チャベス体制を引き継いだニコラス・マドゥーロ大統領(Wikipediaから)

2013年にそのチャベス氏ががんで死去した後を継いだのがニコラス マドゥロ大統領であります。この大統領はチャベス政権よりさらに悪政でこのブログでもその当時から何度か話題にしたことがあります。

2018年5月の大統領選では不正投票や野党排除などの妨害があったとされ、そのマドゥロ氏の再選結果は日本を含む第三国からは厳しく非難されます。そんな中、1月に弱冠35歳の国民議会議長ファン グアイド氏が自分が大統領である、と表明、アメリカ、英国、カナダや南米諸国から「彼こそ大統領」というお墨付きをもらっています。

つまり国内ではマドゥロ氏が「自分が大統領だ!」と譲らず、海外諸国は「グアイド氏こそ、大統領だ!」と押しているわけです。そのマドゥロ氏ですが全ての諸外国を敵に回しているわけではありません。中国やロシアは現政権を支持しており、昔からある世界の対立軸がここでも再現されているといってよいでしょう。

そんなベネズエラですが、経済は完全に破綻しています。IMF発表の同国の2018年インフレ率は170万%、2019年は1000万%と予想されています。(目がくらみそうです!)つまり、自国通貨は完全に機能せず、闇ドルが流通しているのでしょう。(南米でドル信奉が特に強いのは過去のハイパーインフレ等を知っている世代の自国通貨への不信感から来ています。)

一方、イングランド銀行は同行に預けられていた同国の金資産1300億円相当分を引き出そうとしたマドゥロ政権に対しNOを突き付けました。多分、今後、急速に世界の同国資産凍結が強まりマドゥロ政権が早晩崩壊する可能性は高いとみています。

フアン・ヘラルド・グアイド・マルケス(Wikipediaから)

フアン・ヘラルド・グアイド・マルケス(Wikipediaから)

現在、マドゥロ氏には軍幹部が味方しているとされ、グアイド氏は一般軍人とその家族を味方につける工作をしているようであり、個人的には革命的政権交代があり得るとみています。

同国の歴史は内乱ばかりで今回、仮に政権交代があったとしても国民を安心させることができるかどうか予断は許しません。また、中国が同国に貸し込んでいる資金、一説には5兆円規模の行方も不明瞭になります。将来の中国の債権をいったんチャラにするためにも形式上、ソ連のように一旦、国家破綻をさせて再構築し、アメリカなどからの資金の取り込みをしやすくした方がよいと思います。

また、同国の安定は中期的には石油供給の安定につながり、石油価格への不安材料も減ることになると思います。ただし、同国の石油採掘関連の機器はおんぼろで使い物にならないような代物ばかりだったはずで即座の安定供給にはつながりませんが、アメリカは再建を全面支援すると思われます。

南米の小国の話ですが、世界の外交や地図はこんなところでも熾烈な争いを繰り広げています。日本の外交が強力ではないと感じるのはこういうところに積極的に戦略をもって関与していく姿勢でしょう。日本からみて地球の反対側のことだから、といってしまえばそれまで。中国は月の裏側の開発を着々と進め、NASAが焦っているという話もあります。もっとグローバルな視点でモノを見ていく必要はあるでしょう。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年1月28日の記事より転載させていただきました。