限定復刊された城山三郎さん『重役養成計画』(1971年、角川文庫)を拝読。
派閥に属さず立身出世にも興味のない大木泰三が、ある日、重役候補生4人の1人に選ばれた。
高い視野と大物ムードを身につけさせるため、通常の業務は免除され、本社重役室の並ぶに豪華絢爛な部屋が与えられ、組織改善案だけを考える。
- 特別扱いに対する一般組合員、部課長たちの反発
- 「私は大物である」と1日500回声に出すなど重役養成の研修における滑稽さ
- 社長派、専務派、常務派の駆け引き
- 重役候補に選ばれたことによる家庭や周りの変化
など城山三郎さん一流の視点で悲喜こもごもを見事に描く。
最後に、大木泰三から出された組織改善案が面白い。
▼重役会(じゅうやくかい)とは別に重役会(おもやくかい)を作る。
重役会(じゅうやくかい)のメンバーは、重役の肩書だけに未練のある人にして、ゴルフや宴会、パーティなど対外的な付き合いだけやる飾りもの的存在にし、会社経営上の権限は一切、重役会(おもやくかい)に委ねる。
人間の頭脳は、自己維持本能や集団本能などを司る旧皮質と、創造性などを司る新皮質の二種類からなっていて、旧皮質派と新皮質派をたくみに組み合わせることが組織の活性化だという。
▼そして、重役会(おもやくかい)メンバーの中から、社長登板制を始める。
会社の目標は数字によって示され、その数字が計画期間内に充たされなければ、社長は自動的にポストを下り、次の当番に譲らなければならない。また、その目標を達成した場合、社長は次の目標に対して続投する権利を持つが、目標そのものは重役会(おもやくかい)によって設定せられる。第二の目標を達成できなければ、功績ある社長も即座に降板。
ただし、社長をやめても、重役会(おもやくかい)のメンバーなり部長に復帰でき、さらに自分に適した目標のとき、二度、三度と社長を試みることができる。
野球におけるピッチャーのローテーションのように、時期時期の目標にふさわしい人材が、入れ替わり全力で腕をふるえばいいという。
また、社員の自己申告により、重役会(おもやくかい)に提言するための仕組み、準備期間も設けられた。これにより派閥争いも起きないという。
50年近く前に書かれた本だが、今の組織でも応用可能ではないだろうか。
もう少し知りたい!
●憧れの山種美術館 川合玉堂が素晴らしい~(2011.06.28)
<井上貴至 プロフィール>
編集部より:この記事は、井上貴至氏のブログ 2019年2月2日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は井上氏のブログ『井上貴至の地域づくりは楽しい』をご覧ください。