大阪新時代①文化と食の特区を

太田 房江

私のブログでは、今回から随時、「平成の次の大阪」をどう作るか、政策構想を書いていきます。そして、参議院予算委員会で、近く私自身が質問に立つ機会もあると思いますので、そこに向けた提案にもつなげていきます。

大阪から失われた「遊び心」の気風

ここで申し上げたいのは、私が大阪の成長戦略で特に重視していること。昨年末に出版した拙著『ノックととおるのはざまで』(ワニブックス)でも書きましたが、大阪は長年、東京を意識してその後追いをするうちに、大阪が本来持っていた良さ(競争力?)を見失ってしまったのではないか、ということです。

振り返れば高度成長期の1950年代後半、三洋電機にナショナル(ともに今のパナソニック)、シャープなどの大阪の家電メーカーが「三種の神器」(白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫)を作ってはヒットさせたのは、伸び伸びとした遊び心のある気風もあったからのように感じています。

半世紀余りを経て、工業化社会から情報化社会へと変貌しても、いつも時代の殻を破る新しいビジネスは、官僚的なカルチャーからではなく、既成概念にとらわれない自由闊達さと絶え間ない情熱に裏付けられています。松下幸之助さんもスティーブ・ジョブスさんも、活躍した時代は違えども、何か共通するものを感じませんか?

芸事の本場を再興

これから、大阪らしいクリエイティビティーを生かした成長の活路は何か?

専門家や役所のみなさんと意見交換をしていて見えてきたのは、2つの方向性。すなわち「芸事の本場」として21世紀版の再興をしていくことと、食産業をより高度化していくことにあるのではないかということです。

大阪は言わずもがな上方落語、文楽、漫才、吉本興業などの伝統があります。一方で、日本ではクリエイティブ環境がまだまだ欧米に及ばないところも多いのです。

例えば、音楽の分野でいえば、アメリカやイギリスでは500〜700平方メートル級の大規模な録音用のスタジオが存在するので、メジャーなアーティストや映画音楽の収録を集約的にできる拠点があります(日本では、東京にある施設でも200平方メートル級が最大だそうです)。

ロンドン郊外のパインウッドスタジオ。巨大スタジオの外にも広大なセット用敷地を擁する(公式サイトより:編集部)

撮影スタジオも、ロンドン郊外のパインウッドのような巨大施設がないため、海外展開を視野に入れたスケールの大きな作品を国内で作りづらい一因となっています。

基本的には民間資本でつくっていくべきものですが、日本とアジアのクリエイターたちが集結するハリウッド的な街づくりができるよう、国の文化戦略として後押しすることも考えたいところです。

食産業を高度化する

そして食について。日本では食産業を担う人材育成は、調理師学校に見られる技術の取得、もしくは食産業のマネジメントを学ぶ大学などが存在しますが、イタリアの食科学大学のようにガストロノミー(美食学)を専門的に研究するような高等教育・研究機関が十分にありません。

イタリア食科学大学の講義風景(公式サイトより:編集部)

和食は2013年にユネスコの無形文化遺産に登録された、誇りある文化。また、関西独自の食文化もあります。食を切り口に経営に必要な素養を学び、あるいは食、食文化、食産業を研究するような拠点を作る。「食い倒れの街」「天下の台所」と呼ばれた大阪らしさを発揮したクリエイティブ戦略もあっていいのでは。

芸と食。万博を機に国家戦略特区という枠組みを設けてみるのも一案です。

これらのテーマについて国会質問に向け、みなさまからもアイデアをいただき、ブラッシュアップしたいところです。フェイスブックツイッターLINE@でお気軽にご意見をお寄せください。