外務省のHPによると、韓国国会議長による天皇陛下謝罪要求に対し、河野太郎外相は、
「その件については議長の秘書室からですね,議長の発言が本来の意図したことではないように報道されたというような声明が直ちに出されましたし,韓国政府からもこの件について説明がございました。」
「発言には気をつけていただきたいと思いますし,この問題については日韓合意で完全最終的に決着をしたというふうに考えており,韓国側も特に再交渉その他求めていないということですから,しっかりとした正しい認識で御発言を以後していただきたいと思います。」
と発言した、としている。韓国国会議長の発言及び訂正も論外であるが、河野太郎外相の上記の記者に対する発言も話にならないものだ。
ブルームバーグ記事「従軍慰安婦問題は天皇の謝罪の一言で解決される-韓国国会議長」の内容を読めばわかるが、韓国側の説明である「本来の意図したことではないように報道された」という理解は到底不可能である。河野外相の発言は韓国側の適当な言い訳を飲んで譲歩したということだろう。
そして、何よりも最悪なことは河野外相の「正しい認識」という発言だ。
韓国外交省は2018年6月に「合意は法的な拘束力のない政治的合意で、公権力の行使とまで見ることはできない」と公式に主張している。これは慰安婦合意に対して元慰安婦らが基本的人権侵害されたとして憲法裁判所に訴えた際、韓国外交省の公式見解として裁判所に提出された文書に記載されていたものだ。
おまけに「合意の正当性を擁護するものではなく、違憲かどうかの判断を求める訴訟について、法理的な側面から焦点を当てた内容」とし、「合意は慰安婦被害者問題の真の解決にはならず、被害者の意思を反映しないなど多くの問題があるといった意見も盛り込んだ」ともしている。日本側は「両国の首脳が深く関与した政治合意であり、条約など国際約束に近い重みがある」という立場とは相当な隔たりがある。
当然であるが、韓国側にとっての「正しい認識」とは韓国政府による理解のことを指すのであり、日本側の主張する「正しい認識」ではないことは明白だ。つまり、韓国側は日本側に再交渉を求める必要はない、なぜなら正しい認識は日韓で最初から異なっているからである。韓国にしてみれば法的に守る必要がない重みがない約束でしかないのだから。
河野外相がダバオで「正しい認識」発言をした際、この問題について外務省から事前にレクを受けていたことは明らかである。記者の質問にとっさに回答を迫られたというよりは事前に用意された回答をしたとみなすべきだろう。
したがって、カウンターパートになる相手国との関係を重視する外務省は、河野外相に韓国側がどのようにでも取れる「正しい認識」という言葉を使わせたものと思う。明確に韓国に対して謝罪を求めるコメントを行った場合、現場で交渉する外務官僚にとってはたまったものではないからだ。このようなグレーな言葉遣いは外務官僚独特のものだ。
仮に、河野外相が自らの意思で、正しい認識、という言葉を選んだなら同氏の外相としての政治姿勢に問題があるが、外務官僚が用意した通りのコメントをしたならば外相としての資質に問題がある。
2015年に中国国営新華社が天皇陛下に戦争責任に関する謝罪を求めた際、「中国新華社が天皇陛下に謝罪求める記事 菅官房長官「礼を失している」と抗議」として、日本政府は明確に中国の礼を失した行為を批判している。当時の菅官房長官や岸田外相のコメントは正しいものだ。
日本政府は、韓国国会議長の発言に正式に抗議しないという弱腰の対応を、中国、ロシア、北朝鮮らも見ているという「正しい認識」を持つべきだ。韓国相手に抗議もできないとなれば周辺国は再び同様の態度に何時でも出れることになる。
以上のように、河野外相の「正しい認識」発言は全くの間違いであり、日本国の威信を著しく貶める無能なものである。与野党議員は韓国国会議長の発言に対して、外務省が正式に抗議をしたのかを確認し、そしてそのやり取りの内容の開示を迫るべきだ。
編集部より:この記事は、The Urban Folks 2019年2月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。