池江選手で注目も、骨髄ドナーの低くないハードル

田中 紀子

ルネサンスHPより:編集部

池江選手の白血病の告白で、一時サイトがダウンするほど関心が集まっている、「骨髄ドナー」ですが、実は私もドナーになった経験があり、その経験をジャパンインデプスさんに書かせて頂いたので、是非ご一読下さい。

親の葬式にも出れなかった!骨髄ドナーのリスクと恵み

「骨髄ドナーになろう!」「どうやったらなれるの?」と問い合わせが殺到しているようですが、実際には、その想いから実際ドナーになるまでには、様々なハードルが存在しています。

まず、登録の足を運ぶまでに「まっいいか…」となりがちです。
なんせ一度は献血ルームなどの登録受付窓口までいって、採決まで済ませないと登録完了とはならないのです。
忙しい現代人にとって、これがまず最初のハードルです。

その後は、時々骨髄バンクから送って下さるニュースレターなどを眺めたりしながら、待つだけですが、実際にはそんな簡単においそれとマッチングするものではないらしく、私の場合17年間お声がかかりませんでした。

ドナー候補に挙がったあとも、再検査や患者さんの体調なども見ながら、実際に、移植手術が行われるか否かが慎重に決定されます。私の場合も、そうでしたがこの段階に来ると案外「家族の反対にあう」ということも多いようです。

誰だって、協力したい気持ちはあるし必要なことは分かる、大変な状況にある人たちを助けたいと思ってもいる、けれどもそれが自分の家族に降りかかってくるとなると、「やめなさい!」となってしまう気持ちもわかります。

こういったハードルをかいくぐりながら、病院が選定されたり、今度は双方の病院のスケジュールもあわせて、慎重に慎重に移植の日は決まっていきます。

私は、その後もう一度ドナー候補にあがった連絡を頂いたのですが、その時は先方の事情で、話しが流れてしまいました。

骨髄バンクのドナーには55歳までで最大2回までという決まりがあり、すでに54歳となった私には、おそらくもうお役目はまわってこないでしょう。もう私はどんなに役に立ちたいと思っても、ドナーにはなれません。

ただドナーになったからといって、ラッキーなことは何もありません。

別に褒められることも、賞賛されることもなくひっそりとしています。

唯一、厚生労働大臣が感謝状をひっそりと送ってくれます(笑)

休業補償があるわけでもないし、交通費もなんもでません。入院中5000円のクオカードをくれますが、骨髄バンクさんも財政難のようなので、それも辞退しました。

だけどお得なことはなにもなくてもドナーになろう!と思い登録を済ませた人は、昨年末までで493,627人いて、実際に非血縁間の移植手術までいった人は、22,704例あるそうです。こういう数字を見ていると、「やっぱり人類って助け合う生き物だなぁ」という気がします。

ドナー経験というのは、私にとって不思議な感覚です。
自分はやったけど、「みんなやろうよ!」とは思っていないです。
自分の気持ちに突き動かされて「やろう!」と思う人が出てきてくれたらいいなぁという気持ちです。

だから別に自分の家族に勧めてもいないし、私がドナーになっても、他の家族は感化されたりしていないですし、誰も登録していません。

家族は私を「すごいね~、えらいね~」とは全く思っていませんし、むしろ「しょうがない」と思っていると思います。

そして夫や娘や息子が「ドナーになる!」と言ったら、多分動揺します。
少なくとも手放しで喜んだりはしないです。
でも反対もしないです。

ただ自分はやらせて貰って良かったなぁと思っています。
その気持ちも本当です。

こういう曖昧な気持ちでも、誰かの参考になるかもしれないと思って書いています。
お役に立てれば嬉しいです。


編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2019年2月13日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。