沖縄の基地問題については、特に日本の民主主義の課題、という意味では、
- 実現が遅すぎてみんなの苦痛が増している、
- 無理だと思っても判断を柔軟に変えられない、
という事が問題だと思う。民主主義における意思決定とは?という問いだ。
選択肢は、①普天間固定(住宅密集地)、②辺野古拡張し移設(住宅あまりない)、③県外移設、④米軍の代わりに自衛隊が対応、とある。
③、④は、相当時間がかかり、実質①と同じとみていいと思う。②は一つの合理的選択だと思うが、それがなかなか決められない。沖縄県民が、実質①でいいのでは、と言っているなら、それも選択だと思う。どちらもできず、ずるする20年以上、その20年で、無駄な労力がかかった他、感情的な問題がますます解決困難になっていく。
③県外、というのは、ゼロベースならありかもしれない。沖縄は、基地が集中している、押し付けられてるという事や、過去の沖縄戦やアメリカ統治があったりと、被害者意識がある。沖縄戦、アメリカ沖縄統治については、地理的環境でアンラッキーだった面はあり、また、沖縄民族は、いわゆる大和民族とは違っており、実は沖縄が歴史的に日本、という事実はなく、明治維新期の征台の役でたまたま、どさくさに紛れて日本領と認めさせた、という経緯がある。
実際、沖縄人自身、地元民を「ウチナンチュー」、本土の人を「ヤマトンチュー」と言っている人もいる。沖縄民族は、大和民族に征服された別民族だ。被征服民族ゆえに、犠牲になっている、沖縄人が、日本は、沖縄を日本の盾にしてきた、という被害者意識を持つのは分からないではない。感情的な問題として、基地は県外を考えた方がよかったかもしれず、徳之島というのもアイデアなのかもしれない。
一方言えるのは、地理的に東シナ海に基地を置く方が恐らく妥当だろうし、また、攻撃の標的になる、騒音その他の問題から、人口密集地は避けるべき、一方、「迷惑施設」をおかせてもらう分は、お金を渡す、という形になるしかないだろう。(基地はやりようによりなくせるとか東シナ海でなくてもいい、という議論はあるかもしれないが、別のレベルの議論なのでここではしない)また、金払う=その為に働いている、ということなので、別に汚い事ではない。
とはいえ、いろいろ議論の末、移設先は辺野古になった。そしてその案は、人口密集地ではない、という点で、普天間よりははるかにましと言える。辺野古はゼロからの基地建設でなく、キャンプシュワブの拡張であり、辺野古と似たケースの浦添への那覇軍港の移設は粛々と進んでいる。普天間のある宜野湾市、名護市も今や市長は容認派で、それぞれの市民も、しょうがない、だらだら長引かせるのはもうやめよう、と考えている。知事選の結果は違うが、言いたいのは絶対反対一色ではないということ。そして、今やめる、という話になると、実質①が後数十年は続く事になる、それが妥当な判断なのか。
いずれにしろ、移設計画自体やめて実質①を選択するか、②を強行するか、誰かが泥をかぶって決めねばならないだろう。それを政治の責任、というのもわかる。個人的には、政治による、辺野古への土砂投入の決断を支持する。事情がありタイミングを見ていたのだろうが、結果的に、むしろ遅すぎたと思う。
また、辺野古に移設した後も、県外移設は模索してもよいと思う。別の基地を作ったら、その分金はかかるだろうが、とりあえず、県外移設の議論は数十年続くだろうから、その間、普天間基地の危険除去になり、また、普天間基地の土地が有効活用されれば経済にもプラスだろう。30年後に別の基地を作るのに金がかかる分は、代償とみるしかないが、沖縄振興で、年間3000億出し、かつ、地代などで更に払っている事を考えれば、年割りそればそれほどでもないと思う。
一方、沖縄人=善、かわいそう、とは必ずしも見ないで、冷静に理解する必要はあると思う。地代や、米軍基地による雇用などの話もある。
地代や、米軍基地による雇用などの話もある(参照:沖縄人はなぜ普天間基地の辺野古移設に反対するのか|news24-web.com)。なので、辺野古移設後、辺野古の人口増加率には興味ある。多分、相当増えると思う。
普天間の歴史をみると、基地ができてから、人が増えてる。騒音被害等訴える人は、いつから普天間に住むようになったのか、地代はどの程度受け取っているか、と問う事がフェアだ。40%強は年間100万円以上を得ている。全て金を得る為のポーズだとは言わないが、そうした背景もゼロではないと思う。辺野古移設反対意見もこのような動機から発せられているケースもあるだろう。(特に、感情的、情緒的意見の場合)
(参照:普天間基地の成り立ちを淡々と振り返ってみよう|農と島のありんくりん)。
もっと言ってしまうと、基地問題の本質はカネだ。「軍用地」でググれば、軍用地は単に利回りのいい不動産ととらえられている事がわかる。そうとらえれば、基地面積が減る普天間がNGで、より海岸がつぶれる浦添はOK、名護市は軍用地返還を拒否している、翁長前知事は基地賛成派から反対派に変わった、といった矛盾が理解できる。
本当に重要なのは、貧困の話だ。基地についての結論の出ない議論を延々続けることに労力を割くのではなく、貧困に注力すべきだと思う。基地の為に補助金漬けになり、それが結果貧困を招いている、としたら確かにこれは大きな悪だと思う。悪く言うと、中国が途上国支援で軍事政権を強化している(そして西側もたいして変わらない)、その結果、社会の変革が進まず、経済が活性化しない、というのと同じ話だ。補助金をうまく経済に活かすやり方もある。韓国の朴正煕大統領はそれをやった人だ。沖縄はこれができない。補助金がどう使われるべきか、は議論が必要だろう(参照:沖縄から貧困がなくならない本当の理由(1)対症療法|沖縄タイムス 樋口耕太郎氏論考)
そう考えると、確かに、本来基地はなくしてしまった方がいいと思う。理由は、補助金が人をますますダメにするからだ。個人的には、沖縄人のタカりには辟易している。
近年の経済成長は著しい。素晴らしい事だ。格差についても、主体性をもって、沖縄人自ら立ち向かう事を期待したい。
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新井 将晃(あらい まさあき)システムコンサルタント
1975年、埼玉県生まれ。上智大学法学部卒。外資系IT企業に勤務し、システム導入を支援。外資系企業勤務の経験を活かし、政治、経済等について、ブロク執筆中。
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