内閣府が14日発表した2018年10~12月期の国内総生産(GDP)速報値は、物価変動の影響を除いた実質の季節調整値で前期比0.3%増だった。年率換算では1.4%増。年率2.6%減だった7~9月期から、2四半期ぶりのプラスとなった(14日付日経新聞)。
これは夏の自然災害による個人消費の落ち込みの反動ともいえるものであり、内需が全体の成長率押し上げに寄与した格好となった。これに対して外需は中国経済の鈍化などにより成長率を押し下げた。
そして、米商務省が14日に発表した2018年12月の小売売上高は前月比1.2%減となった。市場の予想は若干のプラスとなっていたのに対して大幅なマイナス、しかもこれは2009年9月以来の9年強ぶりの大幅な減少幅となっていた。
注意すべきはこの統計の数値への信頼性となる。日本の統計疑惑ではないが、この数字に関しては政府機関の閉鎖がデータ収集作業に影響した可能性も指摘されている。今回の12月の小売売上高統計は、1月25日まで35日間続いた政府機関の一部閉鎖の影響で遅れて発表されたが、集計作業についてもこれまで通りに行われていたのかという疑問も残ろう。
このため今回の米小売売上高は、念のための参考数値として捉え、今後発表される経済指標を確認した上で、昨年末の景気動向を探る必要はある。
しかし、日本の10~12月期GDPをみても、外需がマイナスとなっていたことは確かであり、米中の貿易摩擦の影響もあって、世界経済の牽引役となっていた米国や中国の景気が急速に後退してきた可能性はある。欧州の景気後退は言わずもがなとなっている。
米国株式市場はこういった景気減速の懸念はあれど、米中貿易交渉の進展への期待や米政府機関の再閉鎖の回避への期待で買い戻されていた。しかし、米中貿易摩擦が完全に解決されるようなことはなく、あくまで妥協点の探り合いとなることも予想される。米政府機関の再閉鎖はなくなったとしても、議会とトランプ大統領の対立は続こう。そもそもトランプ大統領そのものがすでに金融市場のリスク要因となっている。FRBが利上げを停止したところで、あくまで金融市場は一時的に好感はしても、それが実態経済に与える影響については不透明である。
金融市場を取り巻く地合が12月の小売売上高をきっかけに大きく変化してくるのかどうかもいまのところ不透明ながら、あらためて米国を主体とした景気動向が注目されよう。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年2月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。