働き心地が悪くて自滅するメディアたち

Bayfm「パワーベイモーニング」に出演。なんと、リスナーからチョコレートが届くの巻。感謝!ラジオの現場は楽しいな。

一方、ここ数日、メディア企業の社員からの愚痴を聞きまくるの巻。体質が古い、新しいことができない、売上や視聴率・聴取率のために疲弊する、と。それと働き方改革はどう両立するんだろう、という。

数年前、大御所メディアの労組の春闘に向けた集会に識者として呼ばれ。「春闘とは関係ないが・・・。弊社は若手の離職が相次いでいる。なぜだと思うか?」と聞かれた。

空気読まず「それは、御社が、面白くないからですよ」とストレートに答え。やれ部数だ、影響力だ、社会的責任だと言ったところで(それがどうでもいいことだとはもちろん言わない)、そんなものは若手社員には関係ない。無駄に難解で倍率がそれなりにある入社試験を通った先にある仕事は必ずしも面白くない。なんせ、同世代は新聞を読んでいない。先輩たちの武勇伝はむしろ、うざい。

一方、ウェブメディアに転がり込んだところで、PV競争に巻き込まれ。給料も必ずしも高くはない。

ただ「面白い」と「儲かる」はイコールではなく。「経営陣の頭が古い」「自分の在任中に成果を出すことではなく、ミスしないことが目的化している」という愚痴を聞く。ああ、ダメだこりゃと思いつつ、経営者は当然、売上を守らなくてはならないわけで、ね。

一方、「売上を守る」→「そのために部数や、視聴率・聴取率、PVを守る」となると、質はどうするのという話になり。紙媒体にお金を払う中高年に迎合しすぎて書籍や雑誌が荒れていったことを忘れてはならない。ラジオの現場では、スポンサーを十分に確保できない関係から短い時間の番組を大量に作らなくてはならないというような現象も起きているようで。ウェブメディアもクオリティが上がってきたとは思うが、メディアとしての役割をどう果たすか。

昨日の勉強会では、私の地元の放送局社員から「あなたがもし、私の会社の社長になったらまず、何をするか?」と聞かれた。

私は「提供価値を問い直す」と答えた。より詳しく言うならば、ビジョン・ミッション・バリューだな。その放送局は、番組は、アナウンサーやスタッフは何を提供するのか、何のために存在しているのか、それを問い直す、と。

あとは、意味のある無駄を作り出すことかな。今の売上に迎合しすぎて、次の市場を見失ってはいけない。

ちょうど、オピニオン誌で外資系企業の働き方改革を取材し。来月、載る。石戸諭さんの沖縄取材ほどは話題にならないかもしれないが、短納期の中、頑張った。そこでの身も蓋もない答は「全員が、最高のパフォーマンスを発揮できるようにする」というものだった。いや、これは儲けを優先した考えにも聞こえるのだけど。でも、それで社員がいきいきし、高い価値が生まれればいいのではないか、と。なるほど。

ウェブメディアの仕事を今年から復活させるというか、また力を入れるのだけど。この仕事を10年以上やっていると、現場の士気というか、盛り上がりというか、熱を感じるわけで。ああ、盛り下がっているな、守りに入っているな、逆に影響力がなくても盛り上がっているな、これからブレークするなと感じることはある。

長くなった。要するに、面白い、勢いのある職場を作れ、ということ。そうじゃないから自滅、自壊する。


編集部より:この記事は常見陽平氏のブログ「陽平ドットコム~試みの水平線~」2019年2月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、こちらをご覧ください。