石破 茂 です。
予算委員会では26日に中央公聴会が開かれ、それぞれの党が推薦する各界有識者の予算案に対する意見表明と質疑が行われたのですが、ともすれば通常の議員と閣僚の質疑よりも内容と聞きごたえのあるものでした。詳細はネットで画像も見られますのでそちらをご覧いただきたいのですが、本来の委員会質疑もこのようなものであればどんなにいいかとつくづく思いました。
しかし、いつものことながら記者席は大半が空席、テレビ中継も行われず、新聞報道もほとんど無いのは本当に残念なことです。
午前の陳述人は鈴木準氏(大和総研政策調査部長・自民党推薦)、明石順平氏(弁護士・国民民主党推薦)、小出宗昭氏(富士市産業支援センター長・公明党推薦)、三浦瑠麗氏(国際政治学者・維新の会推薦)の四氏だったのですが、陳述も、質問に対する答えも簡にして要を得たもので、平素その所論を読んでいたせいもあってか、賛成反対は別として極めて理解しやすく、充実したひとときを過ごすことが出来ました。
野党の質問者には、もっと「聴かせる」努力が必要です。ただただ政府を罵倒し追及するばかりではなく、野党の主張ももっともだ、と皆が聴き入り、国民の共感を得るべく努めてもらいたいものです。同時に、自分のことを棚に上げて言えば、政府側にももっと「理解してもらう」ための誠意と努力が必要でしょう。感情的になったり、相手を揶揄したり、野次を飛ばしたり、原稿を棒読みしたりなどがあると、野党に揚げ足を取られかねません。
ベトナム・ハノイにおける米朝首脳会談は合意に至ることもなく終わりました。つい一年前まで互いを「チビのロケットマン!」「老いぼれ!」「マッドマン!」と罵倒しあっていたのが、「素晴らしい指導者!」と互いに褒めあうようになった様(さま)には、互いに計算ずくでやっているとはわかっていてもえも言われぬ不気味さと違和感を覚えましたし、金正恩氏の「誰もが歓迎する素晴らしい結果が得られる自信がある」との発言も妙でした。
トランプ氏が妙な妥協をして制裁解除をするなどという最悪の結果にならなかったことは良しとすべきですが、「日本は安全になった。私のおかげだ」とのトランプ氏の言葉とは異なり、我が国を取り巻く厳しい安全保障環境には何の変化もありません。トランプ氏は来年の大統領選挙を睨んで、全て自分に有利になるように逆算してことを進めるのでしょうし、金正恩氏は自分に対する求心力を高めるために今後の戦略を練るに違いありません。どちらも「自分ファースト」なのであり、我が国としては、少しでも拒否的抑止力を中心とする自己防衛力を高めるべきであって、防衛力整備や国民保護などで出来ることは多くあります。
沖縄・普天間基地の辺野古移設に対する賛否を問う県民投票は予想以上に反対が多いという結果となりました。
移設先が何故名護市・辺野古になったかと言えば、当時移設受け入れに賛成してくださる自治体が名護市しかなかったという理由に尽きます。当時の比嘉市長は、宜野湾市・普天間基地周辺の負担軽減と国家全体の安全保障のために、受け入れを表明して職を辞し、辺野古への移設が動き出したのです(他にも海上に建設することによる騒音や事故などの危険の軽減、訓練場や弾薬庫との近接性など、辺野古移設の利点はいくつかありましたが)。
太平洋戦争中、唯一の地上戦が行われ、多くの県民が命を落とし、戦後も長く米国の施政下にあった沖縄に対する思いは、いくら尽くしても尽くし足りないのだと思いますし、私も含めて本土の国民にはまだそれが足りず、沖縄県民の多くの共感を得られていないのだと思います。橋本龍太郎先生、小渕恵三先生、梶山静六先生、野中広務先生など、名護への移設を推進しつつも沖縄に対する限りない思いを持っておられた大先輩の心に少しでも近づくことが必要なのだと改めて痛感します。
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統計について勉強しているのですが、「統計学が日本を救う」(西内啓著・中公新書ラクレ)は極めて示唆に富む本で、多くの刺激を受けました。ご一読をお勧めいたします。
今日中に予算案を衆議院で通過させたい政府・与党と、これを阻止したい野党各党との攻防も今日がヤマ場となり、本会議の採決は一体何時になるのか皆目見当もつきません。
週末は富山県と石川県での講演や統一地方選挙に向けた諸集会に参ります。
早いものでもう三月、皆様ご健勝にてお過ごしくださいませ。
編集部より:この記事は、衆議院議員の石破茂氏(鳥取1区、自由民主党)のオフィシャルブログ 2019年3月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は『石破茂オフィシャルブログ』をご覧ください。