3月10日に発表された国公立大学の合格発表で、ちょっとした異変が起こりました。東京大学の文I(大半が法学部進学)の合格最低点が、文Ⅱ二(大半が経済学部進学)を下回ったのです。
東大は入学時に学部が完全には決まっておらず、入学してから「進フリ」と呼ばれる制度によって、学部が決まります。ただし、文Iの学生は落第しなければ法学部に、文Ⅱの学生は落第しなければ経済学部に全員進学できます。
東大新聞のサイトに掲載されたデータによれば、合格者の平均点は、文Ⅱで379.1点、文Ⅰで378.8点、文Ⅲで361.5点。合格者最低点も文Ⅱが358.1点(550点満点、以下同様)文Ⅰが351.8点、文Ⅲが342.7点と、文Ⅱが文Iを平均点でも最低点でも上回りました(図表も同紙サイトから)。
国内大学の文系最難関といえば、東大文Iで、そこから国家公務員や司法試験に挑戦するのが、王道という「常識」が変わってきたということです。
私が入学したころ(1982年)は「理I、文Ⅲ、ネコ、文Ⅱ」(勉強する順番、ネコより勉強しない)とか「レジャーランド文Ⅱ」と呼ばれ、東大の中でも最も楽な学部と言われていました。
経済学部に進学すれば、民間企業なら成績に関係なく大手に簡単に就職できました。ゼミの同級生も、日本生命、東京海上、日本興業銀行、三井物産といった企業に楽々と内定していました。
当時はまだ外資系企業に就職するのは珍しく、「国家公務員>民間会社員」という価値観でした。それが今やゴールドマンサックスやマッキンゼーに入社する方が、財務省の官僚になったり、裁判官になるより、価値があると思われるようになってきた。それが、学部の人気に反映しているのです。
自分の出身学部が一番になるのは、悪い気はしませんが、この変化は日本社会の価値観の変化を示していると言えます。
今や、グローバルな企業で仕事をしたい優秀な人は東大経済学部ではなく、欧米の大学を目指すようになると思います。現に、日本有数の進学校である、開成高校では、東大と併願してスタンフォード大学、MIT(マサチューセッツ工科大学)、などの欧米大学を受験し、両方合格すると海外に行ってしまうそうです。東大が「すべり止め」にされてしまっているのです。
大学教育も企業がグローバル化することで国内の競争から、グローバルな競争に巻き込まれていく。今回の出来事は、そんな流れを反映した現象と見ることができます。
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編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2019年3月11日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。