米雇用統計で非農業雇用者数の増加幅が急減したが

米労働省が8日に発表した2月の雇用統計は、非農業雇用者数が前月比2万人増となった。増加幅は前月の31.1万人増から急減し、予想の18万人増も大きく下回る結果となった。

Savannah River Site/Flickr:編集部

2万人という増加幅は、ハリケーン被害があった2017年9月の1.8万人増以来、1年5か月ぶりの低さとなる。今回は米東海岸などで続いた降雪の影響で雇用の伸びが低迷したとみられる。このうち建設業は前月比3.1万人減と就業者数が2016年5月以来の純減に転じていた(8日付日経新聞)。

ただし、2月の失業率は3.8%と前月から0.2ポイント低下しており、これは約50年ぶりの水準という歴史的水準を維持しており、さらに2月の平均時給は27.66ドルと前年同月比では3.4%増となっていた。

非農業雇用者数はやや振れが大きく、のちほど大きく修正される可能性もあるため、今後の数字を確認する必要があり、単月の数字だけをみて悲観する必要はない。さらに失業率は低下しており、最近注目度が高い平均時給も上昇している。

とはいえ、ECBはユーロ圏の2019年の成長率を前回12月における1.7%から1.1%に大きく下方修正した。さらに中国の2月の貿易統計で、人民元建て輸出が急減するなど、世界経済が減速している兆候があらためて現れている。

これが米国にも波及しているのか。昨年12月の米国の小売売上高は市場予想に反し減少しており、減少率は過去9年で最大となった。これは米政府機関の一部閉鎖も影響していたとみられるものの、消費が低迷しつつある可能性がある。2月の小売業の就業者数も減少していた。ただし、11日に発表された1月の米小売売上高は前月比0.2%増となり、予想を上回っていた。

たしかに欧州や中国の景気減速による影響を米国はさほど受けずに一人勝ちかとの見方がある。しかし、循環的な景気サイクルによる影響なども考慮すれば、米国景気もスローダウンするとの見方もできるのではなかろうか。米大統領選挙も控え、景気の落ち込みというか株価の下落はなんとか避けたいトランプ政権が対策を講じるとの期待もある。しかし、米国の財政悪化も意識されるなか手段は限られるのではなかろうか。


編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年3月12日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。