米商務省が11日発表した1月の小売売上高は前月比0.2%増となった。12月が1.6%減(今回1.2%限から下方修正)と大きく落ち込んでいたが、そこから回復し、市場予想も上回っていた。昨年12月の減少は政府機関の閉鎖や季節要因が影響した可能性が高いとされており、米経済は引き続きしっかりとの見方もできなくもない。
これに対して欧州や中国の昨年あたりからの景気減速は続いている。ドイツの1月の鉱工業生産指数は前月比0.8%低下と、予想外のマイナスとなった。自動車生産の落ち込みが響いたようであるが、ストライキが発生するなど特殊要因が影響したとの見方もある。
それでもECBは今年の成長率を前回12月における1.7%から1.1%に大きく下方修正し、これを受けて年内に利上げを予定しないことをガイダンスで示し、条件付き長期リファイナンスオペ(TLTRO3)を2019年9月に開始することも決定した。これらは政策変更ではないものの、より緩和的な姿勢を示したともいえる。
FRBも年内利上げ観測を後退させ、保有資産の圧縮計画を早期に切り上げることも検討している。こちらも正常化にブレーキを掛け、緩和効果を醸し出そうとしている。
国内の経済指標をみてみると内閣府が8日発表した2018年10~12月期GDP改定値は、物価変動を除いた実質で前期比0.5%増、年率換算では1.9%増となっていた。ただし、このプラスは前期の7~9月期に自然災害の影響で落ち込んだ反動が出た面もあることで、経済成長が力強さを欠く状況は変わらないとされている。
内閣府は7日に発表した1月の景気動向指数では「下方への局面変化」があったと指摘しており、景気のピークは数か月前に過ぎ下り坂に入っていた可能性を示した(8日付東京新聞)。
国内景気は欧州や中国の景気減速影響もあり、同様に減速傾向にある可能性が高い。そもそもが息の長い景気回復と呼ばれているものは、オリンピック需要などもあったろうが、世界経済の回復基調による影響が大きかったとみられる。
日本では息の長い景気回復なか物価も抑制され、物価目標の達成はほぼ困難な状況となり、大胆な緩和策は継続せざるを得ない。国債の買入の量そのものは縮小させてはいるものの、マイナス金利は継続している。これは金融機関の体力をじりじりと奪っていることも確かであり、このため日銀としても副作用にも目を配らざるを得ない。
日本経済のぬるま湯状態はいつまで続くのか。そして、日銀の異次元緩和もいつまで続けるのか。時間が何かを解決するというよりも、時間が日本経済や金融の潜在リスクをじわりじわりと高めているとの見方もできなくもない。
編集部より:この記事は、久保田博幸氏のブログ「牛さん熊さんブログ」2019年3月13日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。