英国離脱問題、日本が考えるべき教訓

英国EU離脱劇場のシナリオはどこに向かうのでしょうか?EU離脱の行方を決するとされる3日間で最大3回行われることになった議会投票は予想通り3回戦まで行くことになりました。この歴史的「事件」をやや角度を変えてみるとなかなか勉強になるかもしれません。

英国議会が揉めているのは基本的に3つのグループ、離脱強行派、穏健的離脱派、反離脱派に分裂し、お互いに譲歩する余地がないからです。離脱強硬派は英国は何が何でもEUのシステムとはおさらばする、という右派的思想、メイ首相はそんな無責任なことはできないからEUと一定の約束事を作ったうえで離脱しようとする穏健派、そしてだから言ったことない、離脱なんて反対だ、とする派閥がお互い、全く譲らないのであります。

自民党サイト、Wikipediaより:編集部

これが日本だったらどうなるのでしょうか?例えば韓国や中国との案件において強硬派、穏健派、左派的反対派のボイスが時として入り乱れますが、今のところ、政権がうまくコントロールすることで国民感情を大きく刺激する事態にはなってないと思います。

英国の行方がどうなるか、実はこの議会投票の結果が答えを生むことはないとみています。下馬評では、離脱するタイミングを延期する3回目の投票が賛成多数で可決されるとみられています。これを見越し、市場ではすでにポンドがUSドルに対して大きく買われているのですが、理由は「とにかく一息」という安堵感からポンドが買われているのであります。

ところがメイ首相が再三警告しているように仮に数カ月ぐらい延長したところで何も変わらない、というのが現実的路線です。(そしてEUにも延長を認めるか承認する権利があります。)EU側は「交渉はもうたくさん」と思っています。仮にメイ首相を退陣させ、違うトップがEUに再交渉を望んでも何ら引き出せない公算が高いと思います。つまり、離脱延期とは「離脱をあきらめる」という英国のみで決定できる選択肢以外何ら問題を解決しないと認識しています。

日本は現状、韓国とは厳しい関係になっていますが、中国との関係は改善しています。これはタイミングの選択など、安倍首相が交渉巧者だったと思っています。しかしもっと重要なのは自民や公明を中心とした与党が一枚岩で安定していることが日本の圧倒的強みともいえるのです。

英国のように言いたいことを言い放ち、極論を振りかざすのは確かに「辛口の刺激」としては面白かったのかもしれませんが、それは社会問題の一つ、「移民が職を奪う」という国民生活に直接かかわる問題に政治家が油を注いで火をつけたようなものなのでしょう。

その火をつけた犯人、ボリス ジョンソン氏らは消火活動をせず、遠くから見守りながら「もっと燃えろ」と叫んでいた点で国政の造反者であったのではないでしょうか?ですが、それ以上に不甲斐ないのはメイ首相であります。

実は一昨日、メイ首相がユンケル欧州委員会委員長と合意した「英領北アイルランドとアイルランド間の将来の確約」は個人的にはよくできた合意だと思っていたのです。日本ならばこれで国会を説得できるぐらいでしたが大差をもって負けてしまったのはメイ首相自身に責任があると断言してもよいでしょう。つまり議会を味方につけられず、自分の強力な右腕もおらず、「時遅し」で「覆水盆に返らず」なのです。

私は当初からメイ氏を首相に選んだ時点で間違い、と指摘しました。英国はメイ首相とともに混沌とした月日を過ごさねばならなくなりました。それは前首相のキャメロン氏の指導力にも問題があったとも言えます。

こう考えると日本の現在の政治構成、安定的長期政権を担う安倍首相と与党の調整能力は極めて評価すべきレベルにあると考えています。日本の歴史を見てもしっかりした指導者と支える与党の基盤が良い時は日本は成長し、幸せを享受しています。もちろん、どんな時でもいろいろ言う人はいます。野党も声を上げることが仕事なのでしょうが、最近は野党の意気込みも消沈気味に感じます。

私は二階幹事長が安倍首相4選とか、小池百合子都知事支援というボイスを上げていることには違和感を持っていますが、二階氏は「安定」という点においてこれ以上の人が今いるか、と投げかけているのだろうと思います。とすれば次を期待される指導者予備軍は選挙を待つのではなく、今から帝王学を学ぶべきでしょう。

リーダーシップとは何か、宇宙人のような首相が一人切れた風船のように飛んで行ってしまっては何もできません。地にしっかり足をつけて政権を担うことがいかに重要か、今回の英国のドタバタを見て教訓となればよいと思っています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年3月14日の記事より転載させていただきました。