地方議会は誰にチェックされているのか?という話

高橋 富人

ずいぶん前の話になりますが、自著「地方議会議員の選び方」の取材とインタビューを兼ねて、ある地方の市役所職員の友人と食事をしました。

議会の話になったとき「役所の仕事は市民と議会にチェックされてるのに、議会って誰にもチェックされてないに等しいよね」と、なんともいえない表情でつぶやいていました。

そのとき感じた「なるほど」という思いが、この記事を書くきっかけになっています。

市をチェックする二つの目

私たちは、日々の生活の様々なシーンで、市のサービスを受けています。

たとえば、ゴミ出ししたゴミの処理や、整備された市道の利用、福祉事業などなど。どんなに「行政なんて興味ない」という人でも、明日から1回のゴミ出しに500円がかかる生活になったら「ふざけるな!」となります。

そんな意味で、行政というのは、生活者である市民に知らず知らず監視されています。
しかし、私たち市民にとってほとんど関心がないポイントについては、一般的な市民の監視の目は届きません。

たとえば、利根川の水を引き込む水道管の設備工事と維持管理にかかる予算なんて、正直なところまったく興味がないですよね。

そういった点についてもきちんと精査して、税金の使い方の優先順位の付け方は正しいか、無駄はないか、ということを判断し、議決するのが議会の大きな役割の一つです。

そういった意味で、行政は「市民」と「議会」に、二重にチェックされているともいえます。

議会をチェックする市民のかすんだ目

ひるがえって、議会については、誰がチェックしているでしょうか?

実は、議会をチェックするのは、本来市民の役割です。4年に議会議員の一度選挙があるのは、その4年間議会がしっかり仕事をしているか、市民に判断してもらうためです。

しかし、通常私たち市民の議会に対する関心は、先ほどの「利根川の水を引き込む水道管」の予算と、あまり変わらないというのが実情ではないでしょうか。

そして、これは日本全国の地方議会議員の大半にいえることと断言しますが、そういった市民の無関心を利用して、多くの議員は極力情報発信をしない、というスタンスをとり続けます。

情報がなければ、市民としては地方議会議員の活動を知る術がないので、議員が足並みをそろえて情報発信をしなければ、議員側に「有利な」状況を継続できるわけです。

そして、4年に1度の選挙のときに、「子育て応援主義!」とか「若い力で議会刷新!」とか「誰もが幸せに生活できる〇〇市」みたいなこと言って、受かったらまた「情報発信しない議員」というスタンスを貫くという…(涙)。

今年4月21日は、4年に一度の統一地方選の投票日です。

誰に投票するにしても、ご自身が納得できる情報発信をしている候補者を選ぶことが必要だと、私は考えています。

高橋 富人
佐倉市生まれ、佐倉市育ち。國學院大學法学部卒。リクルート「じゃらん事業部」にて広告業務に携わり、後に経済産業省の外郭団体である独立行政法人情報処理推進機構(IPA)で広報を担当。2018年9月末、退職。
出版を主業種とする任意団体「欅通信舎」代表。著書に「地方議会議員の選び方」などがある。