ゴーン事件と日産の経営問題は、まずは、4月の臨時株主総会でのゴーン解任とスナールの副会長就任、そして、6月の株主総会を睨んでの駆け引きに注目が集まる。しかし、どっちにしてもグループのトップがスナールであることは間違いない。
西川社長が5億円の年俸(それも検査不正で三割減額しての数字)に値する仕事ができるなどと誰も思っていない。
いずれにしても、ヤミ給与の問題を別にすれば、よほどのへそ曲がりでない限り、ゴーンが日産の名経営者であったことには異議ないだろう(あとで解説)。
それにトヨタだって、フランス人で元ルノー幹部のルロワに10億円以上を払って経営の大きな部分を任せている(トヨタ社長は3億円)。武田薬品のクリストフ・ウェバー社長もフランス人で年俸12億円だ。
どうして日本の会社でフランス人経営者がするかといえば、偶然ではないと思う。
各国の人はそれぞれ得意がある。そういう意味では日本とフランスの相性はいい。フランス人が得意なのは科学と先端テクノロジー、そして、国際的マネジメントだ。日本人が一番ダメなところだ。日本人は応用技術、生産と販売は強いが、これはフランス人が苦手な部分だ。
それから、アングロサクソンほどには短期的な利益に拘らない。ドイツ人なら彼らの流儀をそのまま持ち込むことしかしない。アングロサクソンなら短期に利益を得て会社を売却したり次の職のステップにするだろう。
日産とルノーが提携した経緯を振り返ると、日産は複数企業の寄合の欠点がもろに出て、また、強すぎる労組の弊害もあって、従業員、工場、取引先すべてが多すぎて破綻していた。
そんな企業と組みたい日本企業はなかった。そこで、ダイムラーと提携交渉をしたのだが、向こうの条件は最低51%の株式取得と役員全員の退任だった。そこに白馬の騎士のように現れたのがルノーのシュバイツアー会長(あの博士が大叔父)で、50%未満の株式取得と役員の総入れ替えなどはしなくてもいいということだった。
そして当時の塙社長たっての希望で示して迎えたのがゴーンだ。当時の認識としては、日産も通産省も倒産させるしかない状況だった日産がルノー傘下に入りながらも、ある程度の自主性と、解体を免れるという夢のような話で、しかも、再建ができた。だから経済産業省OBでも当時のことを知っている人は、だいたいゴーンに同情している。
あの時にルノーにお任せした会社だというのが当時を知る通産官僚としての受け取りだったのである。塙社長をよく知っていたという田中康夫氏も新聞の見出しは「日産、ルノー傘下に」であったといっていた。
それを再建がうまくいったら、元は取ったのだから帰れの出資比率を減らせなど、どうのこうのというのは追い剥ぎの論理で日本人として恥ずかしい話だ(まったく、中国や韓国を笑えない)。
ゴーンもさっさと日産の成功を梃子にもらうものだけもらってフォードにでも行っておればいいのに、日本人は義理堅いから長くいい関係を続けられると勘違いしたのが馬鹿だったとしか言い様がない。
このあいだ、呉座勇一氏の本を読んでたら、織田信長は人を信用しすぎて用心深さに欠けていたから本能寺の変になったと書いていたが、ゴーンも明智光秀たる西川氏の本性と日本人の外国人への冷たさを見抜けなかったのだから経営者として失格と言えばそのとおりだ。