北欧の格安航空(LCC)ノルウェー・エアシャトルが経営危機にあることが表面化して久しい。ノルウェー・エアシャトルの苦境に更に追い打ちをかける事態が発生している。ノルウェー、米国に次いで3番目に利用客の多いスペインで、大手旅行代理店がノルウェー・エアシャトルのチケットを販売しないことを決定したのである。
最初にその決定を下したのはホテルなども経営している旅行業界の大手グループバルセロー(Barceló)の旅行代理店B The Travel Brand(BTTB)で2月5日から同航空のチケットの販売をしないことを決定。それに続いて、スペインの最大総合デパートエル・コルテ・イングレス(El Corte Inglés)の傘下にある旅行代理店Viajes El Corte Inglés(VECI)が3月31日から同じく販売中止を決定した。
更に、スペインで集客力では6番目に位置する旅行代理店Azul Marino Viajes(AM)は2月25日から2つの選択をしている。①同航空のチケットを販売しないこと。②販売はするが、その場合に同航空が破綻しても、そのチケットについての責任は一切負担しない(参照:preferente.com;preferente.com)。
大手旅行代理店がこのような判断を下したのは次のような理由からである。
2018年度の決算で1億5000万ユーロ(195億円)を計上した。同様に2017年度も当初3080万ユーロの赤字とされていたが、外部による監査から実際には1億8440万ユーロ(240億円)の欠損であったことが判明(参照:elpais.com)。
しかも、2月に入って旅行代理店のチケットの販売などに伴うリスクを保障する保険代理店InterMundialが2月21日をもってノルウェー・エアシャトルを保険の対象から外したのである。ということは、仮に同航空が破綻した場合に、そのチケット販売への補償は一切しないということなのである。この決定はチケットを販売する旅行代理店にとって危険度がより一層高まる(参照:noticiasyprotagonistas.com)。
ノルウェー・エアシャトルの2018年の売上は41億2800万ユーロ(5370億円)で、前年比30%の伸びを見せているが、累積赤字の負担が大きいのである。その為、支出の大幅な削減が要求されている。同社はそれを今年は2億400万ユーロ(312億円)の削減を目標にしている。
更にボーイング737の16機の納入を当初予定されていた2020年から2023年と2024年に遅らせることにしている。また、エアバス2機の売却も決めた。そして、レンタルで機材を他の航空会社に貸すことも用意している。
同様に、スペインの場合、8つあるベース基地の内の3つを削減することにしている。またイタリアは1つの基地、米国は2つの基地のそれぞれ削減が予定されている。
更に、客室乗務員は250人、パイロットも124人が脆に影響することになるという。嘗て、ライアン航空から多数のパイロットを引き抜いたのが夢物語のようになっている(参照:elpais.com)。
このような手段によって支出の削減を目指しているが、一番重要なお客の利用が冒頭で触れたように旅行代理店で同航空のチケットを販売しないことを決めたということから、さらにそれが他の旅行代理店にまで波及すると深刻な事態に発展する可能性がある。勿論、最近の利用客の多くはネットで航空会社からチケットを直接購入している件数も増加している。しかし、同航空への信頼性が欠けるようになると、それは同航空のチケットを買い求めようとする利用客の意欲を半減させることになる。
経営危機にあっても、2018年のノルウェー・エアシャトルを利用した乗客は延べ3734万人で一昨年から13%の成長をした。また1機当たりの利用客数は85.8%と比較的高い。だから、同航空の経営陣は現状の苦境は乗り切れるという意識でいるようだ。
しかも、英国航空とイベリア航空の共同経営によるインターナショナル・エアライズ・グループ(IAG)も最終的にノルウェー・エアシャトルの買収から手を引くことを明確にしている。後者が売却の決定を長く遅らせていたのが理由であるが、Brexitによる影響が不透明である故に決定を遅らせたと釈明している。また、IAGの方でもBrexitに絡んでスペインのイベリア航空が欧州連合の域内でフライトルートが制限される可能性が出て来たことからまずはこの問題の解決を優先するとしたようだ。
それ以外の大手航空会社で買収に関心を示している航空会社は存在しない。よって、ノルウェー・エアシャトルは苦境から単独で脱出するか、破綻するか二つにひとつの可能性しかなくなっている。
その様な事情下で、最近3億800万ユーロ(495億円)の増資を行った。その大半をノルウェーで石油タンカーなどを有している船舶業界の富豪ジョン・フレッドリクセンに負っている。
経営陣は単独で経営危機から脱出する勢いである。