記者クラブは「国民の代表」ではない

池田 信夫

朝日新聞の大野博人編集委員が「選挙に通れば「国民の代表」か」という奇妙なコラムを書いている。東京新聞の望月衣塑子記者の騒動をめぐる菅官房長官の「国民の代表は国会議員であって新聞記者ではない」という見解がお気に召さないらしい。

しかし朝日の好きな憲法43条には「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する」と書かれている。大野氏は「選挙で選ばれたのだから民主的な正統性を独占できるという政治家のナイーブで傲慢な認識」を批判するが、選挙で選ばれてもいない新聞記者には、どんな民主的正統性があるのか。

政治取材の経験もない望月記者が官房長官会見に出席できるのは、内閣記者会に加盟している中日新聞社の社員だからである。そして記者クラブは、家賃も払わないで役所を占拠する法的根拠のない親睦団体だ。こんな居候が記者会見を独占することこそ、法治国家として異常である。

政権がマスコミに無料で部屋を提供するのは、彼らを「身内」にして都合のいい記事を書かせるための利益供与だから、政治部の記者は政治家ににらまれるような質問をしない。しかし望月記者はよくも悪くもこの談合をぶち壊したので、記者クラブは最低品質を保証するギルドとしても機能しなくなった。

新聞やテレビだけが国民を代表するメディアだった時代は、とっくに終わった。情報が瞬時に世界に届くインターネット時代に、記者がクラブに1日中張りつく習慣は時代錯誤だ。韓国も記者クラブを廃止した今、役所がマスコミを囲い込んで情報操作する日本の民主主義は、北朝鮮といい勝負だろう。

望月記者が質問する権利はあるが、彼女を記者会見に入れるかどうかを決めるのは、会見を開く政府である。記者クラブが会見を主催して加盟社を自動的に出席させる慣例はやめ、政府がすべてのジャーナリストを個人として審査して出席を許可すべきだ。それが日本以外の国のルールである。