フィンテック、仮想通過、RPA、AI、終わらない金融緩和政策。浮上することのない銀行業界では、これから容赦のない人材の淘汰が始まる。そこでは、「他業種に転職(あるいは独立)し、銀行員時代以上の収入を手にして活躍する銀行員」と「問題意識や専門性に乏しいまま年齢を重ね、やがて銀行から放り出されて収入が激減する銀行員」にハッキリと明暗が分かれてしまう。
今回は、『銀行員転職マニュアル 大失業時代を生き残る銀行員の「3つの武器」を磨け』(きずな出版)を紹介したい。著者は大杉潤さん。日本興業銀行で22年間勤務、新銀行東京の創業メンバーを経て2015年にフリー転身。現在は、コンサルティング業を中心に活動中。年間300冊の多読生活を30年以上継続中。
「銀行というビジネスモデルが崩壊する」と聞いたら、皆さんは、どう感じるだろうか。大杉さんは、元銀行員として、現在はいくつもの業界で会社経営に直接かかわる経営幹部やコンサルタントとして活動するなかで、今後、銀行が崩壊に向かうのは間違いないと確信している。それはどうしてなのか?
「『3つの理由』があります。『(1)ゼロ金利と金融緩和が長期化し、銀行の本業による収益基盤が破綻するため』、『(2)銀行の生命線である「決済機能」がほかの業態の企業にも開かれるため』、『(3)インターネット·バンキングの主流がスマートフォンに移行し、銀行店舗もATMもその大半が不要となるため』。銀行のビジネスモデルの存続が、今後難しくなるということです」(大杉さん)
そのときに、必要とされるのが「アウトプットを前提としたインプット」だと、大杉さんは指摘する。どのようなことだろうか。
「まず指摘しておきたいこととして、『情報は発信した人のところに集まってくる』という原則があります。とくに現代はインターネットとSNSの発達によって、その傾向はますます顕著になりました。リアルタイムで1対1でも、1対多でも、多対多でも、自在にコミュニケーションを取れるようになりました」(大杉さん)
「銀行員が、これから始まる大規模なリストラのなかで生き残れるかは、いかに世の中に『価値ある情報』を発信できるかにかかっているのです。私たちは膨大な情報の渦のなかで生活しています。いまは、いかに情報を集めるかではなく、いかに自分しか発信できないかという『情報編集力』が問われています」(同)
どうすれば冬の時代になる銀行業界の枠を飛び出し、新たなフィールドで活躍できる銀行員になれるのか。銀行に26年勤務し、現在はコンサルタントとして活躍する著者が、金融業界のリアルと将来予測、行動の指針をすべて明らかにした一冊である。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
<新刊情報。4月18日発売>
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)
[本書の評価]★★(69点)
【評価のレべリング】※標準点(合格点)を60点に設定。
★★★★★「レベル5!家宝として置いておきたい本」90点~100点
★★★★ 「レベル4!期待を大きく上回った本」80点~90点未満
★★★ 「レベル3!期待を裏切らない本」70点~80点未満
★★ 「レベル2!読んでも損は無い本」60点~70点未満
★ 「レベル1!評価が難しい本」50点~60点未満
星無し 「レベル0!読むに値しない本」50点未満