「運」とはいったいなんなのか。辞書や広辞苑では「天命」「めぐってくる吉凶の現象」と記されている。「運がいいとか悪いとか、人はときどき口にするけど、そういうことって確かにある」と、さだまさしは、無縁坂のなかで歌っている。無縁坂は文京区湯島にある坂のことで、無縁坂を舞台に母に対する想いを歌った楽曲として知られている。
日本の政治家(参議院議員二期)、宗教家の常岡一郎は、運を高める方法として、「仕事に全力をしぼる」「明るく感心のけいこをする」「いやなことでも、心のにごりをすてて喜んで引き受ける」の3つを紹介している。これは、「仕事の姿勢が運命になること」「あらゆることはけいこをしないと身につかないこと」「不平不満を持ってやっていても身にならない」という解釈になる。
■「運」がいい悪いは自分で決める
今回は興味深い本を紹介したい。『運活力 人生のエネルギーをアップする77の方法』(來夢(著)、実業之日本社)。2009年刊行だから10年前の本になる。著者は、経営者やベストセラー作家やなど各界の著名人のメンターとして人気がある。たまたま友人からいただいたものだが、非常に的を射た良著なので私なりに解釈してみたい。
私たちが生まれた日本は、あたりまえのように学力が持てる恵まれた国でありながら、心が貧しくなってきている。豊かになったぶんだけ横着な人が増えてきているのだ。情報があふれて、ハウツー本もあふれている。自分探しに振り回されて、迷子になってはぐれてしまっている人もいるかもしれない。著者はこのように警鐘を鳴らしている。
そもそも自分の人生が正しいか正しくないかなんて、自分で決めること。「運」がいい、悪いも自分の受け取り方次第。確かにそのとおりである。不安に陥ることもあるし、知らず知らずのうちに心が緩んでしまうこともある。大きなステージに向かってまっしぐらに歩んでいるからこそ、孤高となって心に隙間風が吹くこともある。
著者は、「自分を戒めることができるのは自分自身だけ」としている。自分の人生は、自分にしか歩めない。当然代打なんていうのは存在しない。そんなあたりまえのこと、頭では充分すぎるくらいわかっていたって、ときにブレるのも人間である。
■運の本質が理解できる本
パッと見た目が華やかな人が居たとする。しかし、華やかに輝いている人にも、大なり小なりアクシデントがあるものだ。人間はみんな同じである。自分の「運」を光の方向に導けるのは、結局は自分しかいないのである。
私は年に数百冊の書籍コラムを紹介している。この本を読むことで、いまの自己啓発書で紹介されている解釈やメソッドの多くが、まがい物やパクリであることが理解できる。模倣品を批判する意図は無いので詳細は控えるが、私は多くの著名人の作品より、本書の方がはるかにしっくりきているし納得もしている。
「運」はどんな人にも平等にある。ただし、大切なのはその「運」にどう気づき、活かしていくかということ。仕事、お金、恋、結婚など、生きるうえでの重大な関心事と運の関係について説いている。10年前の本であることに驚きを禁じえない。
<参考書籍>
『運活力 人生のエネルギーをアップする77の方法』(來夢(著)、実業之日本社)
(來夢(著)、実業之日本社)
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
<新刊情報。4月18日発売>
『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)