ラジオは生き残れるのか?

山田 肇

PIXABAY

日本民間放送連盟(民放連)がAMラジオ放送をFMに転換するよう総務省に要望すると各紙が報じた。大規模災害への備えとしてAM番組をFMで流すFM補完放送(ワイドFM)が実施されているが、民放連はこのワイドFMへの一本化を求めているそうだ。この要望は受け入れられるだろうか。また、それでラジオは生き残れるだろうか。

実は、2016年の行政事業レビューでこの問題について議論したことがある。ワイドFMを併用するには設備が必要だが、設備建設を国費(電波利用料)で支援していたからだ。総務省サイトを見ると、レビューでの議論の後も国費支援は続き、多くのワイドFMが開局されてきたことがわかる

論点の一つは国費支援の是非である。レビューの結論は「民放事業者へ多額の国費を投入することに合理性を与えるためには、事業目的が災害対策であることを明確にすべき」であったが、民放連は民間ラジオ事業本体の存続のために利用しようとしている。民間企業が業容を変える際に国費の支援が付くという例は稀だが、今回は許されるだろうか。

ワイドFMは家の中どこかに転がっている90.0MHzまでのFMラジオでは受信できない。ラジオは大規模災害時に必要不可欠な情報伝達手段であるとレビューで総務省は主張した。それには、被災者がワイドFMに対応する、90.0~94.9MHzが受信できるラジオを持っている必要がある。それがなければこの説明は空論で、これが第二の論点。

総務省サイトより

総務省はワイドFM受信機の普及に努力すると話していたが、その後も芳しくない。電子技術産業協会(JEITA)統計によれば、2018年のラジオ国内出荷台数はわずか116万台である。

受信する聴取者がいないワイドFMに移行したら、ラジオ局はますます広告費を集めるのがむずかしくなる。一方で、ネット経由でラジオが聞けるradikoは、ユニークユーザー数も有料会員数も堅調に増加していると電通がレポートしている。ネット配信のほうが生き残りへの道ではないだろうか。一方、災害時の情報伝達は重要だが、総務省はラジオ抜きでの対策を立案する必要がある。