都議会閉会:混沌の中から学んだ、とてつもなく大きなこと

こんにちは、東京都議会議員(町田市選出)のおくざわ高広です。

一昨日、定例会閉会日にあたっての気持ちを軽く書きましたが、今日は、その間ずっと考え続けてきたことについて書きたいと思います。

波乱の都議会、最終日も応酬 19年度予算は成立(TOKYO MXニュース)

この中で、閉会日の最終討論の様子が報じられているのですが、

「誠に遺憾ながら、一部会派が本予算案の重要性を全く理解せずに反対するとは、都民生活、ラグビーW杯、東京五輪のために必要な全ての取り組みを否定するという、無責任極まりない意思の表明にほかならない」(都民ファーストの会)

「平成最後の都議会が知事の間違いさえたださず、議会内の調整すら放棄する一部会派の横暴によって台無しにされた。都民ファーストには程遠い、無秩序な議会になってしまった。都議会、都政の汚点そのものだ」(自民党)

この見解の相違に、本定例会の混乱の全てが現れていたのかなと思います。

新会派として迎えた初の定例会、この間ずっと考えていたのは、

第1会派の役割とは何だろうか

少数会派あるいは野党会派の役割は何だろうか

ということです。最終的な判断としては、賛成か反対、白か黒か、になるのですが、そこに至るまでには、白・黒・灰、はたまた赤や緑といった、無数の判断が繰り返されました。その判断は正しかったのか、間違っていたのか、私たちの役割はなんなのか、自問自答を繰り返していました。

その答えは、意外にも、これまでほとんど話したことのなかった、他会派のベテラン都議の先輩から示唆いただきました。以下、そのお話をご紹介しながら、議会運営に対する私の考え方をお伝えしたいと思います。

以下、ベテラン都議のお話。

「議員てのは、本来都民の代弁者として、都庁(知事)と対峙しなければならないんだよ。15兆円もの予算をもつ巨大な相手と向き合うためには、議会が一丸とならなきゃいけない。それはね、全員が同じ考えを持つということではなく、それぞれが役割分担して、違う角度から対峙するってこと。その意味では、都議会には与党も野党もないんだよ

じゃあね、第1会派の役割てなんだと思う?今の第1会派は予算を通すことが役割だと言ってるみたいだけど、そうじゃないんだよ。総論としては賛成したくても、これまでの主張との整合性や支援者の顔を思い浮かべると、どうしても賛成できない要素ってのが、どの会派にもある。だから、第1会派がその要素を聞き出して、都庁との折衝なんかもしながら、落とし所を見つける。そうすれば反対しなくて済むだろう。それが、議会の調整であって、第1会派の役割なんだよ。

第1会派が汗をかくから、野党も仕方ないなって折れる。つまり賛成する。時にはケンカもするし、時には花も持たせるんだ。数の力で押し通すことは簡単だよ。でも、そこで1人でも多くの議員が賛成できる状況を整えるのが、第1会派もっと言えば知事を推す第1会派の矜持なんじゃないかな。」

目から鱗が落ちる気分でした。心から、すごい人だと思えました。

本定例会でいえば、築地市場跡地の有償所管換えが争点となる中、私が不思議でならなかったのは、元々は築地の有償所管換えに賛成だったはずの会派まで反対に回ってしまったことです。野党側の落とし所を想像するならば、知事が謝罪する、もしくは、知事が方針転換を認め、議会に今後の協力を求める姿勢だったんだと思います。

それが叶わないから、次の落とし所として市場PT座長の小島敏郎氏による経緯の説明と混乱を招いたことへの謝罪を求めた。それも叶わず、というよりも調整すらなかったことから、落とし所を見出せないまま、多くの会派が反対へと舵を切っていったのではないか、と考えています。

予算については、都民ファ、公明党、立憲・民主、みらいが賛成しましたが、立憲・民主は予算案への付帯決議案を提出し、否決されています。でも、この付帯決議案を出すというプロセス(否決されても)が、賛成へまわるための会派としての落とし所だったのではないかと想像しています。

議会は数だ、これはある意味では正解です。しかし、その使い方を間違えると議会は混乱することを学びました。少数会派や野党には困難な都庁(知事)との折衝なども、第一会派が買って出て、その花を野党に持たせる、それくらいの度量がないと、都議会第1会派は努められないのだろうなと実感した次第です。

残念ながら、このボタンのかけ違いは最後まで直ることはありませんでしたが、私はここでノーサイドにしようと思います。本当に恥ずかしい姿をお見せし、また、終わりの見えない協議が続くなかで、数多くの方々に影響を及ぼしました。都民の皆様に送り出していただき、税金をいただいて働いていることを肝に銘じ、都議会全体が自分自身を見直し、新しい時代の幕開けに相応しい再出発を切らなければならないと強く考える次第です。

なお、同じ会派の森沢きょうこ都議、斉藤れいな都議もご自身の考えをブログでつづっているので、あわせてお読みください。3人の会派ですが、それぞれに違う考えや思いを抱き、それを互いに尊重することで、良いバランスで仕事ができているのかなと思っています。違いがあるからこそ、自分ひとりでは出せないようなパワーを発揮できる、多様性こそが東京の力になると信じて、これからも力をあわせて頑張ります!

森沢きょうこ都議ブログ
「いつも心に太陽を」より

「混乱に次ぐ混乱の…」平成最後の都議会~学んだのは…

斉藤れいな都議ブログ
「都民の思いを都政へ。私が開かれた窓になります。」より

都議会は閉会しましたが、ここからが重要です

一つひとつの判断について、今後も責任をもって取り組んでいきます。


編集部より:この記事は、東京都議会議員、奥澤高広氏(町田市選出、無所属・東京みらい)のブログ2019年3月29日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はおくざわ高広 公式ブログ『「聴く」から始まる「東京大改革」』をご覧ください。