ショーケン、内田裕也 破天荒が去った日本の寂しい風景

秋月 涼佑

内田裕也さんが亡くなったかと思ったら、萩原健一さんも亡くなってしまった。ロックンロール、何とも破天荒にして抜群にカッコよかったお二人の死が、どうしても重なってしまう。

萩原健一オフィシャルサイト、内田裕也オフィシャルサイトより:編集部

「同調圧力」、「忖度」という言葉に無縁な、野生種由来の“破天荒”

破天荒”という言葉は故事由来で「前人のなしえなかったことを初めてすること」だそうだが、一般には「大胆で、常識外の行動やそれをする人」を指して使われるだろう。

そう、私にとって“破天荒”と言えば、なんと言ってもこの二人だ。共に自分だけのオリジナルなスタイルを生涯持ち続けたダンディであった。ショーケンで言えば、“ビギ”で有名な菊池武夫氏とのコラボで世の中にいち早くデザイナーアパレルの世界観を知らしめ、日本人デザイナーブランド隆盛の先駆けとなった。内田氏で言えば、生涯ロックンロールのスタイルを崩さなかった。

この二人若い時分の映像を見ると、文句なくかっこ良い上にギラギラしている。このギラギラしている感じ、“草食系男子”などという言葉が聞かれだして以降、芸能界でもトンと見かけなくなった気がする。「同調圧力」とか「忖度」などという悲しい言葉が、もはや当たり前の常識かのように語られる現代日本において、彼らはまったくの野生由来種として生涯を貫いた稀有な存在だ。

内田氏の晩年に密着したドキュメンタリーでは、何気ないシーンが特に印象的だった。車椅子に座り寡黙に何か一点を見つめるようにしている氏を気遣い周囲の人が「こちらに移動すると過ごしやすいですよ」というような優しい一言をかける。すると思いのほか激しく「勝手にさせろよ」と、内田さんが吠えるのだ。いやはや、扱いにくいことこの上ない。これでは確かに周囲の人は大変だ。

ショーケンもそうだが、きっとこの二人、とてつもなく不器用だ。“カッコ”をつけるとか、なんとか“ぶる“というような意図なく、オリジナルで我儘にそういう風にしか生きられないのだ。それゆえ、必然トラブルも多く、お二人とも一度ではない逮捕歴とのこと。大変困った二人なのだが、何故か世の中からギリギリ許容されてきたように思う。

内田裕也、ショーケンを支えた女性たちが、実は一番“破天荒”なのかもしれない

Wikipediaより:編集部

間違いなくそれを支えたのは樹木希林さんや、いしだあゆみさんのような女性の存在だろう。これまた、お二人とも生涯にわたりモテにモテた。彼らのクロニクルには有名な女優をはじめ、数多くの女性が登場する。何でまた、こんな厄介な男性を女性は好きになるんだと、そこまでモテない男はやっかむ他ないが、樹木希林さんが内田さんを評しての有名な一言。「だってお父さんには一かけら、純なものがあるから」という言葉には圧倒される他ない。

本当の破天荒は、この女性たちではないだろうかと思う。無茶苦茶で不器用、だがそこはかとない魅力をたたえる男を女は放っておかない、これもまた男女の機微だ。広い世の中、そんな関係があっても良い。

失われた、昭和日本のおおらかさ

振り返るに日本という国は昭和の時代ずいぶんおおらかな国だった。寅さんや釣りバカ日誌の浜ちゃん、スーダラ節に森繫久彌の社長シリーズと、今なら目くじらを立てられるような人々が決してリアリティーがないとは言えない身近な存在だった。何故そんな国でありえたか不思議なくらいだが、八百万(やおよろず)で世俗的な宗教観や敗戦で一度はゼロスタートを余儀なくされた社会の若さ、治安の良さなど複合的な要因によるものだったとは思う。

一方で、今の日本はどうだろうか。ネットには、言葉狩りや揚げ足取りのあらゆる偏狭があふれ、それがマスコミの論調にまで影響を与え日々誰かをバッシングしていて息苦しい話ばかりだ。企業社会も、危機管理やコンプライアンス、ハラスメント認定に大忙しで本来の活力ある姿からは程遠い状況ではないだろうか。そう言えば広告業界にさえ、かつては結構生息していた破天荒がいなくなってしまった。

そんなあまりにも世知辛い世の中だから、私はZOZOの前澤社長やホリエモンの元気にシンパシーや期待を抱く部分もある。しかし悲しいかな、彼らとて破天荒と呼ぶには計算高過ぎる。

我々は「一かけらの純なもの」を見つける生き方ができるだろうか?

ショーケンの代表作「傷だらけの天使」には誰一人として善人など描かれていなっかたように思う。にもかかわらず、従兄弟同士の岸田今日子、岸田森演ずる悪徳探偵事務所の華麗に黒い二人にしてから、登場人物皆があまりにも魅力的だ。それは、ドラマ全体を覆う焦燥や混沌の中に、きっと“純なもの”の輝きがあったからだ。

やはり日本人は勧善懲悪、黒と白の二元論ではだめだと思う。昔から八百万の神と呼ばれる沢山の神様が存在するとされ、それぞれが完全無欠な存在ではなく、力を合わせて自然界や人々を守っているというのが日本なのである。神話にさえ破天荒で無邪気な神様がたくさん出てくるおおらかさが美点なのだ。

破天荒の中に「一かけらの純なもの」を見出した樹木さん。その樹木さんが去り、二人の破天荒も去って寂しくなった日本の風景。残された我々は「一かけらの純なもの」を見つける、そんな生き方ができるだろうか?

秋月 涼佑(あきづき りょうすけ)
大手広告代理店で外資系クライアント等を担当。現在、独立してブランドプロデューサーとして活動中。