昨年出版された『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』と先ごろ発行された『岩盤規制 誰が成長を阻むのか』は、二つ合わせて読むといっそう勉強になる。
別所直哉が書いた『ビジネスパーソンのための法律を変える教科書』は、民間企業の立場から不合理・時代遅れな法律などの破り方を解説する。
子供の頃「ルールを守れ」と教えられるのは、まだ判断能力が不足する子供の安全を守るため。社会人になって法律の壁にぶつかったら、どうしたら法律を変えられるか考えよ。われわれが投票した国会議員の持つ法律を制改定する力を利用せよと別所は説く。
しかし、いつでも法律を変えればよいわけではない。今あるルールで対応できるのであれば、法律改正は必要ない。今のルールを使い使い尽くした上で、それでも壁があるときに法律を変えようと動く。
法律を変えるには多くの関係者の合意が必要であり、それを実現するには私欲(わが社のために法律を変えよう)ではダメ。社会経済の変化でいかに今の法制度が時代遅れになったか、不合理であるかを業界が一致して説明できなければならない。
国会だけでなく、法律を主管してきた府省にも働きかける必要がある。主管以外の他府省への働きかけが役立った事例もこの本には紹介されている。マスメディアとアカデミアに理解者を作るのは世論形成に役立つ。
この本には古物営業法、著作権法、公職選挙法、消費税法、民法と多くの法律改正の事例が紹介されている。一方で、イベント民泊の解禁のように法律の解釈を変えることで済んだケースも紹介されている。豊富な事例は、これから壁を破ろうという社会人に役立つ。一読を勧めたい。
イベント民泊の解禁では規制改革推進会議への働きかけがどう役立ったか説明されている。この規制改革推進会議で奮闘する原英史が書いた『岩盤規制 誰が成長を阻むのか』について、次回は紹介する。