改元前に「令和」という会社は?会社設立で注意すべきこと

新しい元号が「令和(れいわ)」に決まりました。「2019年4月1日の『令和』の元号発表時点で、『令和』という商号を実際に用いた会社はあったのでしょうか」。このような疑問を呈するのは、司法書士・行政書士の桐ケ谷淳一(リーガスタイル司法書士事務所 行政書士桐ケ谷淳一事務所)さんです。

改元前に「令和」という会社は存在したの?

出典:首相官邸(内閣広報室)

「面白いデータがあったので紹介します。東京商工リサーチが2019年4月1日、新元号『令和』を冠した企業調査を公表しました。新元号を公表した11時30分時点で『令和』の漢字を冠した企業は1社もありませんでした。読みが一致するひらがなで『れいわ』を冠する企業は3社、『レイワ』とカタカナで冠する企業は3社ありました」(桐ケ谷さん)

「新元号発表後早速『令和』と冠した株式会社が登場しました。商号変更は株主総会の特別決議が必要で、それにあわせて、商号を変える手続をしたものと思われます。『令和』と登記申請できるのは、新元号発表後のはずで、その日のうちに商業登記を申請しても、4月3日のときにはまだ終わっていないものと思われます」(同)

ポイントになるのが印鑑の登録だと桐ヶ谷さんは指摘します。会社実印をどうするのか興味深いところ。新元号が発表されてから印鑑を作ると時間がかかるはずなので、実際は変更前商号の実印で登記申請をし、その後印鑑の登録を変えることになるようです。

「今後、新元号で気分一新したい会社が『令和』「という商号を使う可能性は高いでしょう。元号が平成に変わったときは、商号の仮登記制度があり、この制度を活用すれば商号の権利を保全することができましたが、今はそのような制度がありません。同じような商号が複数出てしまい、不正競争防止法に巻き込まれないように注意して商号を決めることが大事です」(桐ヶ谷さん)

会社設立は平成それとも新元号にしてから

「登記する日付にこだわりがある方は設立時期に注意が必要です。会社設立登記ができるのは、法務局が開庁している平日の午前8時30分から午後5時15分まで。土曜・休日は登記は受け付けてくれません。平成の時代に登記をしたい場合、法務局の平成最後の開庁日は4月26日金曜日。それ以降は休日に入るため、会社設立登記を申請することができません」(桐ヶ谷さん)

「平成にこだわり、4月に設立する方は、決算期は3月にする方が多いです。それは、1年まるまる事業年度にあてたほうが分かりやすいからです。一方、新元号で会社を設立したい場合、新元号で最初に法務局が開帳するのは5月7日火曜日になります。5月1日や2日は2019年は休日になるため、設立登記を申請することができません」(同)

株式会社の場合は、公証人の定款認証が必要となります。公証人の定款認証のタイミングも考えなくてはいけません。

「5月7日に会社設立を目指したい場合は、4月中に定款認証をすべきです。定款認証時期は平成になり、会社設立時は新元号となります。定款認証も会社設立も新元号としたいのであれば、5月7日認証、同日設立も可能ですが、公証役場の処理の問題もあり、避けるべきだと思います。ちなみに資本金の払込は定款認証のあとでないとすることができないのが原則なので、タイミングも考慮して設立時期を考えましょう」(桐ヶ谷さん)

「令和」を商号に使用できるの

「商号に使うことは認められています。しかし、元号(現元号であるか否かを問わない)として認識されるにすぎない商標は、識別力がない(自分の商品・役務と他人の商品・役務を区別するものにはならない)ため、商標登録を受けることはできません。詳しくは特許庁のホームページを参考にして下さい。私見ですが、新元号を用いた商号での紛争解決方法は、不正競争防止法で対応するしかないと思われます」(桐ヶ谷さん)

元号の商標登録の際にポイントになるのが「識別力」です。特許庁は「元号として認識される場合はできない」としていますが、「認識されなければ登録できる」という解釈にもなります。「認識されない場合」とはどのようなものか想定がつきませんが、具体的な解釈については未だ専門家でも判断が異なるので注意が必要です。

尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員

<筆者新刊情報/4月18日発売予定>
波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)