目立ち始めた「統合報告書の二極化傾向」

山口 利昭

LIXIL本社(Wikipediaより:編集部)

朝日新聞はLIXILの第三者委員会報告書の全文を(極秘に?)入手したそうですね。開示された要約版と全文を比較した記事を読むと、いかに社外取締役制度が脆弱であるかがわかります(もちろん自戒をこめて…)。

久保利先生が厳しいコメントを述べておられますが、たしかに問題がありそうです。ぜひともLIXILの社外取締役の方々の力で全文を公開していただきたい。以下、本題です。

昨日(4月4日)朝の日経産業新聞では、「統合報告書 発行4倍に」と題する記事が掲載されています。上場会社において統合報告書を発行する企業が増加しており、KPMGジャパンの調査によると東証1部企業の18%、非上場を含めた全体では400社を超える企業が発行しているそうで、この数は5年まえの4倍に相当。スチュワードシップ・コード(具体的には改訂版 指針3-3)の影響で、機関投資家が対象企業の「サステナビリティ経営の一環としてのリスクマネジメント能力」を真剣に評価するようになったので、この傾向は今後ますます強まるものと予想します。

調査を行ったKPMGのパートナーの方が「非財務情報に対する企業の意識は高まっている。一方、優れた統合報告書とそうでないものの差が開き、内容の優劣で二極化傾向がある」と述べておられますが、私も同様の意見です。コーポレートガバナンス・コードへの対応状況をみていて、同じような視点から、私なりに二極化傾向が生じる要因について、以下の図表のとおりまとめてみました。詳しい解説はいたしませんが、おおよそこんな感じではないでしょうか。

統合報告書も「形式から実質へ」と深化しているものと考えています。

山口 利昭 山口利昭法律事務所代表弁護士
大阪大学法学部卒業。大阪弁護士会所属(1990年登録  42期)。IPO支援、内部統制システム構築支援、企業会計関連、コンプライアンス体制整備、不正検査業務、独立第三者委員会委員、社外取締役、社外監査役、内部通報制度における外部窓口業務など数々の企業法務を手がける。ニッセンホールディングス、大東建託株式会社、大阪大学ベンチャーキャピタル株式会社の社外監査役を歴任。大阪メトロ(大阪市高速電気軌道株式会社)社外監査役(2018年4月~)。事務所HP


編集部より:この記事は、弁護士、山口利昭氏のブログ 2019年4月5日の記事を転載させていただきました(タイトルは編集部で一部改稿)。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、山口氏のブログ「ビジネス法務の部屋」をご覧ください。