暗躍するロシア発航空便:ベネズエラが金塊を不正流出か

崩壊寸前にあるベネズエラのマドゥロ大統領の政権は米国によって石油が制裁の対象にされて資金源が断たれていることを受けて、同じく同国が産出する金を不正に外国に流出させて資金を獲得しようとしている。

制裁逃れの金流出を画策するマドゥロ政権(※画像はイメージです。flickr:編集部)

2月当初にロシアからミステリアスな飛行機がカラカスに到着して金塊を持ち出すのではないかと噂されたが、その一部がアフリカのウガンダで検出されたのである。

ベネズエラの電子紙『la patilla』(3月16日付)は、ベネズエラ石油公社の元重役ペドロ・マリオ・ブレリがモスクワからタンザニアとウガンダを経由してカラカスに到着し、帰途も同じルートで戻った飛行機について警告。というのは、ベルギー人アラン・ゲッツがアフリカのウガンダで経営する金精錬所African Gold Refinery(AGR)が紛争国で産出された金塊を手に入れて不正に密売していることとベネズエラで産出される金が関係しているからである。

それを裏付ける理由は、2月27日にベネズエラ国民議会の議員アンヘル・アルバラドがベネズエラ中央銀行から8トンの金塊が不正に持ち出されたことを告発。それがウガンダのAGRに到着していたことが調査で明らかにされたのである。

実際にAGRに届いているのは7.4トンで、時価3億ドル(330億円)になるという。よって、0.6トンが途中で紛失していることになる。3月2日に最初の3.8トンがAGRに届き、残りの3.6トンが3月4日に届いたという。ところが、3月2日に届いた金塊は消失。3月7日の時点で2番目に届いた3.6トンだけが密輸入だと判断されて関係当局によって押収されているそうだ。受取先はウガンダの中央銀行になっていたという。(参照:elpitazo.net

現在のベネズエラの金の精錬はスイスが制裁の影響で金塊を送っても差し押さえられるという懸念があるため、ベネズエラで産出された金の大半は密かにトルコに送られているという。

米国の制裁によってベネズエラの金開発公社ミネルベン(Minerven)の米国における資産はすべて凍結されている。また、ベネズエラの金を購入しているロシア、トルコ、アラブ首長国連邦なども制裁の影響を受ける可能性があるとされている。

ベネズエラの金の埋蔵量は8000トン以上と憶測されており、時価にして2430億ドル(26兆7000億円)相当だという。鉱脈はベネズエラ国土の12%を占め、埋蔵されている面積はポルトガルに匹敵する広さだという。更に、ボーキサイト、銅、ダイヤモンド、コンデンサーの材料になるコルタンなども埋蔵されている。

地下資源が実に豊富なベネズエラが皮肉にも20年間の悪政によって経済は完全に崩壊しているというのが現状である。

ベネズエラ経済を支えて来た原油の産出が大幅に後退したため、国外に脱出しない者は職場を求めて金の鉱脈があるボリバル州に集まっている。

現在の金の採掘は「シンディカトス」と呼ばれている犯罪マフィアによって運営されている。ゲリラ組織コロンビア解放軍や民族解放軍も金の採掘に関与しているという。4万人が現在の金の採掘と密売に関与しているそうだ。(参照:abc.es

正式な販売には金塊をカリブ海のオランダ領アルバ島に送り品位を保証してもらってから市場に出すということだが、制裁を受けている現在のベネズエラは不正に密売して資金を稼いでいるのが現状である。その中でも、アラブ首長国連邦のドバイはマドゥロ政権の金の上得意な顧客だという。

白石 和幸(しらいし かずゆき) 貿易コンサルタント
1951年生まれ、広島市出身。スペイン・バレンシア在住40年。商社設立を経て貿易コンサルタントに転身。国際政治外交研究に取り組む。著書に『1万キロ離れて観た日本』(文芸社)