新時代は、ブレない誇りと国際協調で隷属から自立へ --- 角田 晶生

昭和の敗戦より74年。国も民も目先の金儲けと魔女狩りに狂奔し、嬉々として強者に隷属し続けた平成が、もうすぐ終わろうとしている。

二千数百年以上にわたる先人たちの遺産を食い潰しながら、やれ「クールジャパン」「おもてなし」だのとおだてられてはウリナラマンセー(我が国、万歳)と浮かれている同胞たちに、嘆息を禁じ得ない。

写真AC:編集部

筆者とて、日本国とその国民統合の象徴にあらせられる皇室に対しては心からの万歳を奉るが、それは決して他国からの評価や相対に基づくものではない。

日本が我らにとってかけがえのない祖国にして故郷であるからこそ、良くも悪くも愛するのである。

そして愛すればこそ改善点は指摘の声も上げるし、自分たちで守りたい、守れるようになりたいと願い、出来る限りの努力を尽くすのである。たとえ占領体制による欺瞞であろうと、我々は民主国家の「主権者」なのだから。

北朝鮮による初めての核実験(2006年10月)をきっかけにそう決意して海上自衛隊に志願し、拙くも任期を満了後、現在は予備自衛官として国防の末席を汚す栄誉に与っている。

しかし、敗戦によるトラウマがよほど大きいのか、筆者が「自分の国は自分で守るのが基本である」など口にすると、今なおほとんどの者が眉を顰める。

「戦争なんてとんでもない。軍隊なんてない方がいい」

そんな当たり前過ぎてあくびが出るような絵空事を、大の大人が真剣に訴える姿は滑稽を通り過ぎてカルトじみた狂気すら感じる。

しかし、このカルトは日本中に蔓延しており、時に愛国を謳う首相までもが「不戦の誓い」などと口走る始末である。

相手が「絶対に戦わない」と判っていれば、誰がその者の言うことなど聞くだろうか。諸賢の大好きな「話し合い」は、戦いも辞さぬ覚悟と備えがあって初めて成り立つのである。

少し話は変わるが、筆者の海上自衛官時代、基地のある大湊(青森県むつ市)では、毎月のように「自衛隊反対デモ」が行われ、休日前になるとその場に近づかないよう厳命されたものである。

現地をうろついている若者は、そのほとんどが自衛官かカモシカなので、たまに呑みにいけば「税金泥棒」「兵隊ごっこ」などと絡まれることも茶飯事だった。

陸自衛生科隊員による救援活動:防衛省サイトより:編集部

国民の無理解と理不尽な言いがかりに耐えながら任期満了で退官したが、自衛隊を取り巻く状況が一変したのは、2011年3月11日「東日本大震災」である。

被災した各地で懸命な救援活動に当たった自衛隊は、軍事組織ならではの自己完結性によってインフラの麻痺した状況下でも着実に任務を遂行。

その甲斐あって広く国民から理解と信頼を勝ち取るに至り、面と向かって自衛隊を否定する者は影をひそめた。

「自衛隊さんありがとう」「頼もしい自衛官」……そんな声も方々で聞かれ、一予備役としては積年の苦労が報われたようで誠に嬉しい限り……ではあるが、そこに国民の「当事者意識」は存在しない。

「何かあったら、自衛隊に任せればいい」「いざ有事に死ぬのは、自分から志願した自衛官だけでいい」「国防なんて、自分には関係ない」……等々。

ちょっと自衛隊を持ち上げておいて、自分はグルメやレジャーにファッションにデートに勤しむのである(もちろん、グルメ等自体が悪いわけではない)。いまだに国防を行政サービスと勘違いし、相も変わらず「空気と平和はタダ」と思い込んでいる国民が圧倒的多数を占めている。

言うまでもなく、平和と独立は絶えず守り続けた努力の結果として勝ち取られるものである。

平和を望むなら戦争の本質を熟知し、時としてそれも辞さぬ覚悟と備えなくしては「話し合い」すら応じてくれない。

そんな当たり前の現実から永きにわたって目を背けしめたマスコミ・メディアや教育界の罪深さを痛感するが、その中で育った国民(有権者)が選び出す代表など、それ相応でしかない。

「民主主義の質は、有権者の質」
政治に対する不満は、自分自身の不甲斐なさと心得るべきである。

「自由の尊さが解らない者には、奴隷の身分がお似合いだ」
自由とは好き放題ではなく「自らに由(よ)る」こと。永らく過去の遺産を食い潰し続けた旧時代と、今こそ訣別しなければならない。

他国から「評価されているから凄い」、他国より「勝っているから誇らしい」といった他国ありきでなく、世界各国と協調しながらも「かけがえのない祖国」というぶれない軸をもって日本を愛し、大切に守る意識こそ、日本人には必要なのである。

間もなく迎える「令和」が、真の自主独立に向けた長い道程の第一歩を踏み出す時代となるよう、心より期待している。

角田 晶生(つのだ あきお)フリーライター。
1980年11月24日、鎌倉に生まれ育つ。海上自衛官の任期満了後、2010年より現職。防衛・人材育成・歴史・地域文化などをメインに、職業やボランティア経験に基づく寄稿多数。

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