昨日(4月11日)、朝日新聞の「耕論」というコーナーで、3人の識者(?)がピエール瀧氏の作品自粛問題について語っておられたのを、ご覧になった方も多いはずですが、相変わらず尾木ママの支離滅裂な論調には呆れてしまいました。
(耕論)作品には罪はない? 多田憲之さん、尾木直樹さん、碓井真史さん(朝日新聞デジタル)
何故マスコミはこの薬物問題があると必ず、この問題に無知で、しかも現在子供達の教育現場にいるわけでもない、教育評論家という肩書きを引っ提げたタレントさんを起用するのでしょうか?
この方のおっしゃることは、我々依存症者にとって有害なので、本当に真面目に、薬物問題でこの人に取材することをやめていただきたいと思います。
第一、この記事を書かれた記者さん、尾木ママの言ってることが、矛盾だらけで、意味不明だ???と思わなかったんでしょうか?文章が全然繋がっていないですよ?
他のお二人のお話しに比べて、尾木ママは、「厳しい事を言って道徳的かつ清廉な人に見せたいけど、薬物依存症問題に苦しむ人々を見捨てるような冷たい人には思われたくない」という自分の保身しか考えていない発言をしているので、内容がどっちつかずで見苦しいです。
矛盾と保身その1
「作品と犯罪は別だ」「作品に罪はない」「過去の作品まで封じるのは行き過ぎ」という意見は、一般論としては理解できます。
ただ、それは大人だけの意見です。当然、社会には子どももいます。
ぼくは、薬物汚染の「弱者」である子どもを守る立場から警鐘を鳴らしたいのです。現時点では作品は自粛すべきだと思います。
自粛が行き過ぎという世間のムードにおもねりつつ、突然子供を出すことで、子供思いの道徳的な人間をアピールされていますが、何故、ピエール瀧さんの作品を自粛すると子供を薬物汚染から守れるのか?どういう理屈なのか、意味が1ミリも分からないです。
私は、中学生の時に「人間失格」を読んで、それこそ人生が変わる位衝撃を受けましたけど、あれ読んで「薬物やってみよう!」なんて一度も思わなかったし、もちろんやりませんでした。むしろ、薬物に頼らなければならないような苦悩する人間の弱さを知り、救われた気持ちになったもんです。
あの苦悩こそが、いまだに青春小説のバイブルとなっているわけですよね?
臭いものに蓋することが、子供のためになんかならないです。
矛盾と保身 その2
薬物汚染の低年齢化が進み、「小学6年生が大麻吸引」「中学生が覚醒剤を使用」といったニュースは何も特別ではありません。
ネットやSNSなど入手方法も容易になったうえ、価格も安くなっています。そもそも日本の子どもたちは他国と比べて自己肯定感が極めて低く、薬物に流されやすい土壌が熟成されているのです。
これは矛盾と保身というより、でたらめですね。
ネットやSNSなんかなくても、昔から薬物なんか手に入れようと思えば手に入りました。
今に始まったことなんかじゃないですね。
特に我々のような、社会が校内暴力で荒れに荒れていた時代は、シンナーが入った空き缶が校内にゴロゴロ転がっていましたし、中学生が平気で暴力団の舎弟になっていた時代でしたので、覚せい剤を手に入れている同級生もいました。
また、確かに日本の学生は自己肯定感が低いです。
けれどもその割合と薬物問題は比例なんかしていません。
こちらに日本、米国、中国、韓国の高校生の心の健康調査があります。
高校生の心と体の健康に関する意識調査―日本・米国・中国・韓国の比較―(国立青少年教育振興機構)
自己肯定思考の因子の得点を見ると、日本はマイナス 0.664と突出して低く、最も高いのはプラス 0.479の米国です。
けれどもご存知の通り、青少年の薬物問題は米国の方がずっと蔓延しています。
なぜこうもいい加減なこと平気で言えるのか?
ちょっと調べればすぐに分かることなのに、朝日の記者さんも、もう少し綿密に調べを入れた方が良いですよ。
続く、薬物が手に入りやすい論も同じですが、それとピエール瀧の作品自粛がどう結びつくのか?合理的な説明は一言もありません。
矛盾と保身その3
薬物乱用の防止教育について言えば、単に恐怖心をあおるようなものではなく、脳への影響など科学的知見に基づいた内容であるべきです。
自粛、撤収、配信停止の嵐が吹き荒れることは、恐怖心をあおること以外の何物でもありませんが?
矛盾と保身 その4
「覚醒剤やめますか、それとも人間やめますか」というコピーがありました。でもピエール瀧被告は、何十年も芸能界で活躍してきました。
よきパパだったとさえ言われています。彼の作品が平然と出続けたら、
子どもたちに、薬物の恐ろしさは「大人が大げさに脅しているだけ」と受け止められてしまいます。
この発言は、何度読んでも意味がわかりませんが、読みようによっては重大な人権侵害ともとれ、真意を問いたいですね。
瀧さんは覚せい剤ではなくコカインですが、「コカインなんかやるようなピエール瀧は人間をやめた人なんだから、良きパパであったことも、芸能界で活躍したことも作品と共に抹殺しなきゃだめ!そうでなきゃ子供達に悪影響があるわよ!」
と言っているように読めますが、尾木ママは薬物事犯のジェノサイドでも行いたいのでしょうか?
是非とも、真意を教えて下さい。
矛盾と保身 その5
例えば五輪メダリストは、ドーピングの発覚によりメダルを剥奪(はくだつ)されます。
薬物で運動能力を向上させたとみなされるからです。つまり、薬物と結果が結びついているのです。ではなぜ、作品中の俳優の名演技と薬物は「別物」なのでしょうか。
演技が日常的な薬物摂取による「ドーピング」的効果なら、両者には関係があると言えます。被告が俳優として社会的責任を果たすためにも厳しい姿勢でのぞむべきです。
しかし見捨てるのではなく、依存症の治療には社会が温かい手を差し伸べないといけません。
何度も申し上げておりますが、おめ~らがコカインでドーピングなんて言うから、まるでコカインでスーパーマンになれるような誤解を与えて、薬物への興味煽ってるだろ~が!しかもドーピングは松本人志さんの言葉、尾木ママの考えじゃないでしょうよ。
また社会的責任を果たすために、その作品を作り上げるために努力した、他の人々の努力や情熱まで無にされなきゃならないのでしょうか?ファンの気持ちはどうでもいいのでしょうか?しかもどうして司法以外に人に罰を与えて良いと思っているのでしょうか?
そしてとってつけたような治療には温かい手…笑うしかありません。
だったら、作品の自粛をまず止めて、社会から排除しようとすることをやめるべきです。
治療を望む依存症の当事者家族の立場から言えば、こういう風潮がある限り、怖くて本当のことなど誰にも打ち明けられません。
矛盾と保身 その6
東映は予定通り出演作品を公開しました。
いったん見合わせ、この事件が若い世代に与える影響を慎重に見てほしかったです。
公開を称賛する声もありますが、そこに見える大人の薬物への鈍感さや、依存症に対する脳科学的な無理解に、ぼくは憤りを感じます。尾木ママはこの問題では譲れません。
子どもたちは、大人の対応ぶりをしっかり見ているように思います。
無事公開されましたけど、それによって若者たちが一斉に薬物に走ったのでしょうか?
薬物問題に対して一番鈍感なのはまずあなた自身だと自覚して下さい。薬物に走ってしまうの背景にあるものは「孤独」と「孤立」です。このような自粛の嵐が吹き荒れれば、薬物問題を抱えた人達は、怖くてますます闇に潜り、使わざるを得なくなります。
依存症に対する脳科学的な無理解は、あなたに無いんですよね?
依存症に対する効果的な政策は「非犯罪化」これがサイエンスによって実証されていることです。だから世界中で、そういう流れになっているんです。どんな薬物問題に無知な人でも理解できる動画あるのでご紹介しますね。
いいですか、依存症の問題は刑罰や辱め、吊るし上げではなく、メンタルヘルスの問題として取り扱うべきなんです。
それが世界的に効果をあげている方法なんです。
尾木ママが譲れないのは勝手です、独り言ならどうぞつぶやいてください。
但し、薬物問題でマスコミがこの人を起用するのは止めて下さい。マジで、追いつめられて自殺者が出ます。
最後に私が尊敬する宇佐美典也さんがツイッターで尾木ママについてつぶやいていたのでご紹介させて下さい。
尾木ママなんて「いじめはダメ」と言いつつピエール瀧に対しては「あんなやつは社会から排除しろ」って言って積極的にリンチに参戦するんだから俺からしたら意味不明の存在だわ。
— 宇佐美典也 (@usaminoriya) 2019年4月8日
激しく同意です。
田中 紀子 公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト