F-35が欠陥機か、ニューズウィーク日本版が欠陥メディアか?

清谷 信一

さて、空自のF-35A戦闘機が墜落しましたが、未だにパイロットも機体も発見されていません。
現時点で墜落原因の特定は困難です。あれこれ言っても推測の域をでません。
ですからぼくはこの墜落自体には発言してません。

F-35A(空自サイトより:編集部)

F-35 1機の金額で何ができたかという志葉玲氏の記事が話題になっています。

墜落したF35、1機分のお金で何ができたか―「欠陥商品」147機6兆2000億円を爆買いの愚(ニューズウイーク日本版)

無論高額な防衛装備で福祉などで何ができるという話は納税者として大いに議論すべきです。
ですが、防衛費をなくしてそのカネをというのは空理空論でしかありません。

ですが、問題なのはこの場合、F-35が空自の戦闘機で適切でなかった、そのカネをなにかに使えばという話なのか、そもそも戦闘機自体がいらないというのかでは議論が全く違ってきます。

この記事ではそれがありません。カナダはF-35の調達やめた、という話も書いてありますが、それは議会の税金の使い方として適切ではなかったという話であり、欠陥云々という話ではありません。牽強付会もいいところです。

今の段階で欠陥機だと断定するのは早急でしょう。
また編集部がつけたであろう「墜落したF35、1機分のお金で何ができたか―「欠陥商品」147機6兆2000億円を爆買いの愚」というタイトルも欠陥機だと決めつけており、ジャーナリズムとしての節度が疑われます。
同じことを自動車メーカーにやるでしょうか?まず訴えられる可能性が高い。

率直に申し上げれば、まるで活動家のアジとしか思えないタイトルです。
ニューズウィークをマトモな媒体と思わない読者も少なくないでしょう。他の記事の信憑性まで疑われてしまうでしょう。

防衛費の使い方について、防衛費使わなければそのカネをという寝言をいっていると、いつまでたっても防衛費を削減なんかできません。

例えば「米国の8倍もする小銃を調達する必要があるのか、もっと安くならないか」という議論ではなく、「小銃はいらない、病院が欲しい」では問題の解決になりません。このような主張は議論を放棄しているのと同じです。

常日頃防衛費の削減と、適正化を訴えている身としては、この手のロジックを弄ぶひとがむしろ最大の敵であるとすらいえます。

ぼくはF-35Aの導入に反対でしたが、導入するならばFACOで国内生産しても技術移転もなく、単に機体調達が高くなるだけだから輸入がいいと主張しました。当時は「保守の論客(笑)」とか軍オタさん達から散々叩かれましたが、今年度以降は輸入に切り替わりました。これで2000億円程度は調達費が削減されるでしょう。

論座:F-35採用の正当性と防衛当局の当事者意識を疑う(上)
論座:F-35採用の正当性と防衛当局の当事者意識を疑う(下)

エビデンスに基づく分析によって、具体的な指摘をしない限り、防衛費の適正化や低減はできません。

率直に申し上げて、こういう記事を書いてたり、記事中に登場する運動家の皆さんがいくら騒いでも、防衛費は削減も適性化もされません。

防衛省や安倍政権にとっては痛くも痒くもないでしょう。ぼくからみれば彼らは防衛省や安倍政権の防衛費の無駄遣い追及を妨害する、「無能な味方」でしかありません。

東洋経済オンラインに寄稿しました。
日本の防衛装備が中国に後れを取る根本的背景   技術的問題はもちろん法規制もハードルだ

Japan in Depth. に以下の記事を寄稿しました。
RWS搭載海自護衛艦に疑問
新防衛大綱・中期防を読む(上)


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年4月17日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。