国際標準化団体であるIEC(国際電気標準会議)は毎月、広報誌を発行している。その最新号に「デジタル技術は教育を再定義する Digital learning is redefining education」という興味深い記事が出ていた。
デジタル技術によって世界各国で、学生はより効果的に、まったく新しい視点からの教育を受けられるようになった。情報社会の進展と共に変化していく未来に備えて、世界中であらゆる年齢の学生が勉強の方法を変え、教育業界は教育システムを再考しつつある。
新しい教育システムは初等中等教育だけでなく、高齢者も含めて、再訓練や生涯学習として提供されつつある。発展途上国の人、遠隔地の人、あるいは移動を制限されている人に教育を提供し、それによって世界全体で「生活の質」が向上する。
バーチャルリアリティ、モノのインターネット(IoT)、人工知能(AI)などの革新的な技術は、国際連合が定めた「持続可能な開発目標(SDGs)」の第四項目(すべての人に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する)に応えるために提供されていく。
たとえばAIはどのように利用されるのだろうか。
学生の学習データが数多く集められ、それらを分析することで最良の学習結果をもたらす教育方法が見出されていく。対話型学習、インテリジェントな個別指導、教育用ゲーム、その他の学習活動から、その学生にあった方法が選択されるのである。
しかし技術自体が教育を提供するわけではない。「教師」がそれを上手に利用することで初めて「教育」となる。このメッセージは明確である。
IECがISOと共同管理するJTC 1の第36グループ(SC 36)が教育に関わる国際標準化の舞台である。デジタル教育コンテンツができる限り広く流通するために、コンテンツの記述方法(Content packaging)やデジタル教科書の要件(requirements for e-textbooks)、教育資源のメタデータ(Metadata for learning resources)などの標準化が進められている。教育コンテンツの品質管理の在り方やアクセシビリティなども検討された。データセキュリティとプライバシーも保証されなければならない。学習プロセス中に作成されたデータがハッキングされ、悪用されてしまう可能性があるからだ。
デジタル教育は成長しつつある。医師は世界中の学生に複雑な手術の様子を流すことができる。レスキュー隊はVRゲームプログラムを使用して緊急事態の訓練ができる。職場では、工場・病院・オフィスを問わず、従業員が継続的なトレーニングを受けられるようになる。
記事は次のように結ばれている。
IEC、ISOの学習、教育、および訓練に関する国際規格は、ソフト開発者とハードウェア開発者が相互運用性とデータセキュリティを提供することで、教育のデジタル化を促進し、それによってアクセシビリティを拡大し、グローバル教育の全体的な質を高める。