平成30年度の人手不足関連倒産は全国で400件、前年度比で28. 6%の増加となり過去最高を記録しました。
東京商工リサーチの発表によると、後継者難(経営者が見つからない)が269件、
求人難(従業員が集まらない)が76件、人件費の高騰による倒産は30件。多数の従業員退職による倒産は25件です。その中で1番件数が増えた倒産は、求人難で前年度比28.6%増(前年度311件)でした。
分野別トップはサービス業の105件です。サービス業は裾野が広く、飲食業や介護・医療などが含まれています。著書『外食力 ニッポンの未来が知りたければ「外食」から学べ!』に書いた通り、飲食業界は人を大切にする企業が多いです。しかし、サービス業の中では23件でトップです。おそらくは小規模店が多いからであると予想されます。
一方、業種別においては建設業が75件、製造業が62件、卸売業が59件となっており、格段に数が多いです。人手不足ということは人材難であるため、人材派遣業が儲かっているように思えますが、実は人材派遣会社そのものが人手不足で倒産しています。
その理由は2つ。1つ目は派遣スタッフが不足しており、2つ目は派遣スタッフの管理や教育をする人材派遣会社のスタッフ自体が不足していることです。人材派遣会社の人手不足とは皮肉に聞こえますね。特に大手人材派遣会社は福利厚生も良いため、色々な意味で手厚い会社に人が流れ、中小企業の人材派遣会社で倒産が目立つ結果となったのだと思われます。
倒産そのものは、経営者は財産を失い、従業員は退職金が出ず路頭に迷い、取引先や株主は損失を被るため、当然悲惨です。そのことを踏まえた上で、久留米大学商学部の塚崎公義教授は「人手不足倒産は日本経済にとっては良い倒産」と主張しています。
それは、魅力的な企業に人が移動することは、その企業が労働力をうまく活用しているから人が集まっているということです。裏を返せば、労働力を利益に結び付けられていない会社が倒産しているということです。私はこの主張を読み「なるほど!」と思いました。最近の言葉に置き換えると、『生産性の高いところに人がシフトしている』と言えると思います。
あくまでもマクロ的視点から広く日本経済を考えた場合、人手不足倒産は『良い倒産』という一面もありますね。
編集部より:この記事は、前横浜市長、元衆議院議員の中田宏氏の公式ブログ 2019年4月18日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はこちらをご覧ください。