左派が政権与党になった平成政治
平成政治を顧みれば、政治の混乱が著しかった。混乱の原因も政策というより小沢一郎氏との距離を巡るものであり、政治家の人間関係が主因だった。
政治家も感情ある人間だから人間関係を理由に政党選択、勢力結集を図ることは避けられないかもしれない。
しかし国民が期待しているのは政策に基づく行動であり人間関係に基づく政治の混乱は国民の政治不信を招いただけだった。
実際、平成政治では自社さ連立政権のように55年体制下では想像できなかった政権も誕生した。そしてその自社さ連立政権が解消されると平成政治の混乱の原因だった小沢一郎氏が唐突に自民党と連立し、短期間の内にまた離れるなどとにかく目まぐるしかった。
混乱が激しかった平成政治だったが、憲法9条への評価を巡る右派・左派の対立構図は依然、存在した。
平成政治では自社さ連立政権や民主党政権のように左派が政権与党になった。もちろんことはそう単純ではない。
前者は「保守」を自称し長期間の与党経験がある自民党が参加していたし後者も党内に「保守」が一定程度存在していた。
ともあれ平成政治では左派が政権与党になったわけだが、その評価はどうだろうか。肯定的に評価できる要素は乏しいのではないだろうか。
特に民主党政権はただただ混乱を招いただけではなかったか。左派が政権与党になって明らかになったのは日本の左派、要するに「左翼」「リベラル」「護憲派」「立憲主義者」と呼べる勢力は驚くほど政権担当能力がないということである。
左派の関心は自分自身である
日本の左派の特徴は抽象・誇張表現を好み、話をすぐ大きくする。「立憲主義を守れ」とか「民主主義を守れ」という表現もこの選好からくる。
もう下火になった森友・加計学園騒動や統計不正の問題も左派はまるで驚天動地の事態のように騒ぐが、そのわりには違法性の証明や政権関与の証拠も全く出せていない。まるで「証拠がないのが証拠だ」といわんばかりである。
左派は抽象・誇張表現を好むが物事はこれだけでは動かない。物事は抽象的なものを具体化していく作業を通じて動くのである。しかし左派にはこれが出来ない。左派には具体化の能力がない。左派に具体化の能力がない理由は単純に具体的な情報を持っていないからだろう。情報収集の方法は様々あるが「他人の話を聴く」というのは単純で地味だが重要な方法である。
そして「他人の話を聴く」際に求められるのは聴く側の「態度」「姿勢」そして「忍耐」である。では日本の左派に忍耐力はあるだろうか。例えば立憲民主党の枝野代表は短気な印象があるがどうだろうか。他にも立憲民主党会派所属参議院議員たる小西洋之氏に忍耐力を期待している者もほとんどいないだろう。やはり日本の左派の情報収集能力には疑問符がつく。
また誇張表現を好むためか劇的なものも好む。例えば中国・韓国との歴史認識問題では中韓両国を「被害者」日本を「加害者」と位置づけ日本を断罪する。「断罪」はショー(show)の性格を持つ劇的なものである。当然、他人の注目も集まる。
歴史認識問題では外国の主張に同調し「忘れられた加害責任」とか「戦争責任を直視しよう」とか適当に言って最後に畏まって「過去に目を閉ざす者は結局のところ現在にも盲目となります」とでも言えばなんとなく格好がつく。歴史認識問題ほど自己アピールに適したテーマないだろう。
このように日本の左派の関心は平和でも人権でも自由でも平等でもなく自分自身である。
だから左派が発する「立憲主義」「平和」「人権」などの言葉も彼(女)らのために消費される「党派用語」に過ぎず本来の意味と価値を失っている。
「思春期の少年」として左派
抽象・誇張表現を好み、話をすぐ大きくし議論を破壊する。これが日本の左派の現実である。
どうしてこうなってしまったのかと言うとやはり55年体制の政治意識「万年野党」「在野勢力」の意識が強いからである。
「万年野党」「在野勢力」は「批判のための批判」が肯定され負担が少ない立ち位置である。大きな声で反対を叫ぶだけで成立し「知性」「理性」「品性」は求められていない。
そしてその程度だから簡単に腐敗するし腐敗の程度ももはや回復不可能な次元である。
それにしても日本の左派は負担が少ない立ち位置に居るにも関わらずいつも怒っている。
野党の政治家やリベラル系ジャーナリズムはいつも安倍政権に対して怒っている。
負担が少ない立ち位置にも関わらず怒らずにはいられないとは実に不幸である。
「理想」と「現実」との距離が縮められないことに苛立つ「思春期の少年」と同じである。
左派は「思春期の少年」に過ぎず相手にするだけでも多大な労力が求められる。だから上手く避けるしかない。
改元直前に平成政治における左派を総括するならば彼(女)らは「思春期の少年」に過ぎなかったと言うことだけである。
筆者としては左派の自立(=憲法9条改正容認等)を願うばかりである。
高山 貴男(たかやま たかお)地方公務員