外務省は23日、2019年版の「外交青書」を公表したが、前年版にあった「北方四島は日本に帰属する」という表現が消えたことが報道で明らかになると、ネット世論は、安倍政権シンパの右派、アンチの左派双方から厳しい意見が噴出する異例の“総スカン”状態となった。
外交青書は、国際情勢の推移及び日本が行ってきた外交活動の概観をとりまとめたもので、1957年から毎年発行されている(参照:外務省サイト)。この日は外務省サイトに概要のみのアップだったが、朝日新聞によると、2018年版にあった「北方四島は日本に帰属する」の記述が消失。昨年11月の日露首脳会談以降、ロシア側を刺激しない外交方針を反映する形となった。
これには
どうして外務省は、ロシアにおもねるのでしょうか?北方四島は、日本固有の領土であり、ロシアが70年以上不法占拠しているだけ
という穏やかな言葉で疑問を呈する人もいたや
領土変換は簡単なことではないことが目に見えているから。約70年もの間ロシアの人たち住んでいるのだから簡単ではない。何年後でもいい、私は待っている。
などと理解を示す人がいたものの、全体的には
ロシアに気を使ったところで1島も返す気はないぞ
そんな弱腰だからいつまでも舐められる
などと、厳しいトーンだった。
共産党の志位委員長は「戦後の自民党政府の主張すら自己否定する屈辱外交」「『すり寄れば交渉が進む』と考えるとは、愚かの極み」などとツイート。
「『北方領土は日本に帰属』消える」
「私の手で解決する」とあれだけ大騒ぎしてきた結果が、戦後の自民党政府の主張すら自己否定する屈辱外交か。スターリンからプーチンへと続く覇権主義への批判ぬきに、「すり寄れば交渉が進む」と考えるとは、愚かの極みだ。https://t.co/tiRQxFJ6YF— 志位和夫 (@shiikazuo) 2019年4月23日
また、アゴラ執筆陣の渡瀬裕哉氏も「今年の外交青書は、日本人のこちらが譲歩すれば相手も譲歩するという非現実な思考回路、と、脳内構造が半分米国エスタブリッシュメントになった世襲及び役人の思考回路の悪いところの合算。当然の帰結。」と酷評した。
今年の外交青書は、日本人のこちらが譲歩すれば相手も譲歩するという非現実な思考回路、と、脳内構造が半分米国エスタブリッシュメントになった世襲及び役人の思考回路の悪いところの合算。当然の帰結。
— ワタセユウヤ (@yuyawatase) 2019年4月23日
青書ではさらに北朝鮮外交についても核・ミサイル、拉致問題に関して強硬な記述が消えた。ただし、反日政策を強める韓国に対しては、
慰安婦問題や、日本企業に賠償を命じた元徴用工らをめぐる韓国大法院(最高裁)判決を特集記事で詳しく紹介。「日韓関係は非常に厳しい状況に直面した」と指摘。(出典:朝日新聞)
などと厳しめのトーンに。“チグハグ”な青書の構成となったことに、津田大介氏は「もうマジで日本が強気に出られる国って韓国しかないのな……。」と皮肉気味にコメントした。
もうマジで日本が強気に出られる国って韓国しかないのな……。https://t.co/dOdcMt1m1z
— 津田大介 (@tsuda) 2019年4月23日
なお、北方領土とは対照的に、竹島については「わが国固有の領土」との記述が維持。韓国政府はこの日、抗議するコメントを発表した。政治ジャーナリストの安積明子氏はヤフーニュースのオーサーコメントで、
韓国からの抗議はいわばお決まりの「セレモニー」なので、全く気にすることはありません。問題はこのように「何がなんでも自国の権利を主張すること」が「外交」の一応の基本であるにもかかわらず、今回の外交青書で日本政府が北方領土と対北対策について「後退を見せた」という点です。
と指摘した上で、
領土問題については表向きには厳しく原則を貫き、水面下でしたたかに交渉する。そうしなければ領土が戻ってくるどころか、国家として最も大切なものを失いかねません。
と先行きに懸念を示していた。