謝罪をする時にもっとも重要なのが「客観的視点」です。なぜなら、謝罪は誰の目から見ても明らかなくらい、たしかな「謝罪」でなければいけないからです。この客観的視点がないと、自分は謝罪をしたつもりでも、相手からは謝罪とは思われない「謝罪っぽいもの」にしかなりません。
今回は、拙著『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)のなかから謝罪に関するエッセンスを紹介します。
「客観的視点」がないと、ただ自己弁護をしているだけに思われます。自分と相手の受け止め方が違うのは、受け手が謝罪の一部しか見られないからです。例えば、不祥事を起こした企業が記者会見を行ったとしても、テレビのニュースなどでそのすべてが放送されることはありません。多くの場合、印象的な一部分だけを切り取って放送します。
少し昔の話になりますが、2000年に発生した雪印乳業の食中毒事件がありました。記者団が質問を投げかけた際に「私は寝てないんだ」と発言してしまった社長の映像は繰り返しテレビで放映されました。これは「雪印の無責任な経営体質」を象徴する場面となり、多くの消費者の記憶に刻まれます。
しかし、あの場面の裏側を知る人物に話を聞くと次のことがわかりました。記者会見が長時間におよんだため、会社側が一旦会見を打ち切ったにもかかわらず、記者団が社長を強引に追い掛け回した結果「つぶさに出てしまった一言」だったそうです。ちょっとした一言、一場面であったとしても、クローズアップのされ方によっては命取りになるのです。
これと同じことは対個人への謝罪でも起こります。自分は誠心誠意、謝罪をしたつもりでも、ちょっとした不用意な一言だけで、相手が謝罪だと認めてくれないことは往々にしてあるのです。こうした事態を防ぐために大切なのは、「謝罪の時は一切、自己弁護と受け取られかねない発言をしない」と肝に銘じておくことです。
謝罪のプロは、絶対に言い訳をしません。謝罪をする時には覚悟を決めて、徹底的に謝ったほうが良いのです。謝罪をするときは、再起やリスクヘッジなどを考えてはいけません。再起を考えると、謝罪が中途半端になります。中途半端は何も良い結果を生みません。
尾藤克之
コラムニスト、明治大学サービス創新研究所研究員
※4月19日に『波風を立てない仕事のルール』(きずな出版)を上梓しました。