“憲法族”でない安倍総理が犯した改憲手順の過ち

早川 忠孝

自民党の執行部の皆さんはとかく肩に力が入り、自分たちが憲法改正論議をリードしていくんだ、などと息巻いておられるようだが、ここは一度肩の力を抜いて一息吐かれては如何だろうか。

自民党が議論をリードするんだ、自分たちが憲法改正論議の先頭に立つのだ、などと騒ぎ過ぎると、成るものも成らなくなってしまう虞がある。

ここは、中山太郎元衆議院憲法調査会長の流儀がよさそうである。

憲法族ではない安倍総理は、明らかに急ぎ過ぎて手順前後の過ちを犯してしまったように思えてならない。

選挙には強いが、憲法改正のような難しい政治課題の解決には若干不得手だったんだろうと思っている。

憲法審査会の議論に委ねながら、じっくり落としどころを探るという自民党の旧来の手法に従っていれば、それなりに国民的合意が得られそうな憲法改正構想の提示に漕ぎ着けたはずだと思うが、安倍総理は明らかに功を焦った。

自民党が先に改憲項目を出してしまうと、野党が自民党の改憲項目案を呑むか呑まないかの二者択一を迫られることになり、結局は野党を憲法改正の反対陣営に追い込んでしまうことになってしまう、ということは見易い道理であり、如何にも安倍自民党は拙劣だ、ということになってしまう。

大島理森衆議院議長のような懐の深さと周到さが安倍総理にあれば、もっと違った展開になったのかも知れないな、と思うが、済んでしまったことは仕方がない。

幸い、今は、憲法改正論議をしっかりやった方がいいという空気が醸成されつつあるようだ。

こういう時は、自民党はあまり気張らない方がいい。
然るべき民間団体が、各党の政策担当者に呼び掛けて、中立公正の立場からの憲法改正論議を展開していただくくらいでいいのではないか。

急がば回れ、という言葉もある。
無理をしなければ、やがて落ち着くところに落ち着くはずだ。


編集部より:この記事は、弁護士・元衆議院議員、早川忠孝氏のブログ 2019年5月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は早川氏の公式ブログ「早川忠孝の一念発起・日々新たに」をご覧ください。