1年半ぶりの憲法審査会:民放連に聞く、国民投票時のCM規制

長島 昭久

昨日(5月9日)午前、憲法審査会が開かれ、1年半ぶりの実質審議となりました。
民放連の方々を参考人としてお招きして、国民投票に際してのCM規制についての質疑を行いました。

以下、質疑内容の要旨です。

5月9日衆議院 憲法審査会 質疑要旨(スタッフ編集)

<長島委員>
本題に入る前に、一言申し上げたい。憲法審査会の実質審議は1年半ぶりとなる。森会長はじめ関係者のご努力を多としたい。この間、説得力のある合理的な理由もなく、ひたすら開催に抵抗を続けてきた一部野党の皆様には強く苦言を呈したいと思う。本来、国会対策上の駆け引きや党派的な利害を乗り越えて熟議を尽くすべき場。いかなる理由があろうとも主権者国民から負託を受けた国会議員として「議論をしない選択」はあってはならないと考える。残された会期で、憲法審査会が円滑に運営され、日本国憲法の諸問題に関する自由闊達な議論が行なわれることを切に希望する。

それでは、本題に入る。CMであれ、意見表明であれ、表現の自由というものは、憲法保障においては最上位に位置づけられる中核的な基本的人権であるから、最大限尊重されるべきである。従って、法的規制はもとより、自主的な規制であったとしても、規制をするということにはすべからく慎重であるべきだと考える。

その上で、私から2問お尋ねしたいと思う。まず、政治的公平性を担保するための一手段である「ファクトチェック」について質問させていただきたい。 さきほど、量的バランスについても相当長い時間議論を行ったが、放送法第4条は「政治的公平性」、「事実を曲げない」という番組編集を各放送事業者に義務付けている。

他方、アメリカではこの放送法の原型といわれている「フェアネス・ドクトリン」は既に30年前に撤廃され、いまは例えばトランプ支持のFOXニュースや反トランプと言われるCNNニュースのように、いわゆる保守・リベラルといった政治的な主張が鮮明となっている。

また、放送以外の新聞や雑誌等の出版メディアは言うに及ばず、ネットニュースやSNSを使った個々人の情報発信も急速に普及しているが、そういったメディアは、時間的な制約や分量の制約が少なく、政治的公平性に縛られないというのが特徴と言える。そのようなメディアの存在は、一方で社会の分断を煽る面が強調されるが、国民に対して、はっきりとした主張や論点を提供してくれるという意味では、重要な役割もあると考える。

理想論としては、フェイク・ニュース、極端な考え方、度を超えた表現などは、「言論の自由市場」で淘汰されていくべきだろうが、誤った情報が流布されたまま修正されず、投票日を迎えてしまうことの影響を真剣に考えなければいけない。この懸念は、イギリスのBREXIT、あるいはロシアが介入したと言われている先のアメリカの大統領選挙などの事例を見ていく必要がある。

<問1>
憲法改正の是非を問う国民投票に対するCMの中身の吟味を含めて民放連のガイドラインがあるが、具体的なプロセスについてご説明いただきたい。一口にファクトチェックと言っても、依って立つ政治的立場によって、事実の解釈が異なる場合も想定できる。そもそも事実とは何かを判断はどのような基準でどのように行う予定なのか。あるいは馬場委員の質問の中で触れられた「ファクトチェックには十分な時間が掛ける」という話もあったが、もし誤った情報を流してしまった場合の事後的修正・訂正などはどのようにして行なわれるのか。

<田嶋参考人> 日本民間放送連盟(民放連)理事待遇 番組・著作権部長
フェイクニュースはあってはならない。意図的なものでなかったとしても、誤った情報を流すことは視聴者の利益には適わない。日常的な考査実務においては、絵コンテの段階から相談するようにお願いをしている。実際に多くの場合は、広告主や広告会社を通じて素材についてやり取りを行なっている。その中で、データに関しては必要に応じてテレビ局側から広告主の方にエビデンスの照会を行っている。これは国民投票のみならず、平時や選挙時などの政党CMでも同様に行なっている。

その上で、放送に至ることになるが、仮に修正・訂正が万一必要になってしまった場合は、国民投票運動のCM放送対応の全体のなかで訂正の情報を国民に示す必要が出てくる。CMの間違いをCMで訂正するのは現実的には難しいことであるが、メディアとしての安心安全を確保するためには必要なフローだと自覚している。

<長島委員:問2>
今回、議題とされているのはテレビ・ラジオなどの放送メディアのCM規制であるが、近年では多様なメディアがある。あたかも、放送メディアだけが自主規制を迫られているという風にも見受けられる。広告収入については、今年はインターネットが放送を追い抜くとされており、国民投票法案が審議されていた12年前とメディア環境が劇的に変わってきている。その意味では、今回の法改正は規制対象を放送メディアだけに限って議論が進めるということは妥当性を欠くのではないかと考えている。

民放連として、他のメディア、特にネットメディアのCM規制の在り方について、どういう見解をお持ちなのか。それぞれのメディアの特性によって、規制の在り方が異なってもいいと考えているのか、それとも、同様の基準にすべきと考えているのか、忌憚のないご見解をお伺いしたい。

<永原参考人> 日本民間放送連盟(民放連)専務理事
大前提として、法規制が望ましくないと考えておりまして、ネットにも法規制を掛けるべきだと放送事業者の代表者である私が言って良いことではない。そのため、他メディアの規制のあり方については、お答えしかねる。

<長島委員>
最後に森憲法審査会長に。井出委員からも要望があったが、ネットメディアに関するヒアリングの機会もぜひ設けていただきたい。

<森 憲法審査会会長>
その件については、幹事会にて協議をする。

質疑の録画映像はコチラからご覧いただけます。


長島 昭久  衆議院議員(東京21区)、地域政党「未来日本」代表
1962年生まれ、寅年。慶應義塾大学で修士号(憲法学)、米ジョンズ・ホプキンス大学SAISで修士号(国際関係論)取得。2003年に衆院選初当選、民主党政権では、防衛政務官、防衛副大臣を歴任。2016年から文部科学委員会筆頭理事、外務委員会委員。17年、民進党を離党し、希望の党を経て無所属。18年6月、地域政党「未来日本」を旗揚げ。公式サイト。ツイッター「@nagashima21


編集部より:この記事は、地域政党「未来日本」代表、衆議院議員の長島昭久氏(東京21区)のオフィシャルブログ 2019年5月8日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は長島昭久 WeBLOG『翔ぶが如く』をご覧ください。