キレる人が得をするゴネ得社会が、クレーマーを無限に湧かせる

黒坂 岳央

こんにちは!黒坂岳央(くろさかたけを)です。
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アメリカやヨーロッパへ行くと、お客さん側がサービス提供者へ気を使う場面に遭遇することがあります。お店で買物をする時も、「こちらは売ってやっているんだ」と言わんばかりの姿勢の人もいて、文化の違いについてひしひしと感じさせられます。

そんな中、世界中の誰もが驚くのは日本のカスタマーサービスのレベルの高さです。末端のアルバイト社員まで、親切丁寧な対応が行き届いています。「サービスは無料」という感覚が染み付いている人も多いのではないでしょうか。お客さんにとって本当に日本は快適です。しかし、時々クレーマー客を目撃してしまいます。私は彼らを生み出すのは「ゴネ得社会」だとつくづく感じさせられるのです。

写真AC:編集部

持ち帰りのお寿司で体験した過剰サービス

「切れるメリットのあるゴネ得社会がクレーマーを生み出す」、このことを実感したお話をします。

私は先日、お寿司で持ち帰り寿司をオーダーして家に戻り、寿司を冷蔵庫に置きました。その後、時間をおいて家族で食べようとしたら、オーダーしたつもりのお寿司の一部が見当たりません。「あれ?お店の人が入れ忘れたのかな?もしくは自分がオーダー漏れした?」と思って念の為、確認のためにお店に電話をかけたところ、こちらが恐縮してしまうほどの平謝りです。

「申し訳ございません。すぐにご自宅にお届けします。割引券をおつけしますので」と言われました。もしもそれをさせてしまうと、私は割引券を得て、お得かもしれませんが、お店側は人件費などの経費を考えると赤字になりかねません(お店と自宅はかなりの距離があります)。ですので、言うまでもなくありがたいオファーをお断りしました。私は人に迷惑をかけてまで、得をしたいとはまったく思いません。

しかし、こうしたお店の心からの申し出を、利用してやろうと思う人が世の中にいても不思議ではありません。お店のお申し出はありがたいのですが、私はかえって「クレーマーが湧いてしまわないか?」心配になってしまいました。

クレーマーの理不尽な思考回路

クレーマーがクレームを言うのは、「怒り」という感情を使って相手を動かすためです。

子供が言うことを聞かず、声を荒げるのもこれと同じです。「早くしなさいって言ってるでしょ!!」と目くじら立てて怒る母親に驚いて、子供は急いで言うことを聞くわけです。でも、その母親の心の中を覗いてみると、別に本当に腹を立てていなかったりします。

飲食店などでも、「いつまで待たせるんだ!」と声を荒げるおじさんがいて、店員さんが慌てて料理を運ぶ姿を目にすることがあります。あれも、怒りの感情を使って自分のところに料理を運ぶのを優先させる行為に他なりません。

クレーマーとは、怒りを使って自分が得をする事を選択する人たちなのです。その怒りの源泉は、「怒れば得をする」というゴネ得社会にあるのです。お店に損をさせても、自分の得を取りたいという極めて傲慢で、ビジネス感覚のない思考です。

真のビジネスマンは怒らない

私はクレームをいう思考が全くありません。いつまでも待たされるなど、不快な思いをしたくない場合は、出来るだけ値段の高いお店に行きます。先日も、ランチタイムに1,000円前後のお店で長蛇の列が出来ていたので、3,000円のランチメニューのお店に入りましたが、空いていました。他のお店は混んでいても、高いお店は空いていることが多いですから、待たされることはありません。もちろん、支払う金額は高くなりますが、それは「待ちたくない」というエクスプレスパスを購入するようなものですから、快適なサービスのためには必要な出費なのです。

「安いお店で済ませたいけど、待ちたくもない」というのは無理なオーダーです。値段が安いお店が安い理由は、回転率を高めているからで、時間帯によってはどうしても混雑は避けられません。他にも利用客がいるわけですから、自分ひとりが得をしたいというのは、子供が駄々をこねているのと同じなのです。

私は真のビジネス感覚を持った人間は怒らないと考えます。私は過去、不動産屋と待ち合わせて物件内覧をしに行きました。約束の時間を過ぎても、相手の担当者が現れなかったので電話をすると、「すいません、寝坊しました。今から行きますので」と言われ、1時間待って欲しいということでしたので内覧は辞めました。

そのような時には私がかなりの損失を被ってしまいました。待ち合わせ場所に行く手間と交通費、かかった時間など、すべてがムダになってしまいました。後日、この不手際を不動産屋に冷静に伝えたら、丁重にお詫びされました。そして、別の物件を紹介してくれましたが、それはあまり市場に出回らない驚くほどの優良物件でした(結局、事情があってそれ以外の物件に入居を決めたのですが…)。

クレーマーにならなくても、相手に不手際があるなら冷静に事実を訴え、補償が必要であるならそれを伝えるだけでいいのです。最終的にどうするかは相手次第。納得できない対応なら、静かに離れればいいだけのことで、みっともなく声を荒げる必要はありません。

訪日外国人も3,000万人の大台になりますから、そろそろ日本人にも「サービスは有料である」というグローバルの概念を持つ頃ではないでしょうか。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。