事件や事故に驚くバカに対策は立てられない

八幡 和郎

フジテレビ系列の「バイキング」で経済産業省課長補佐の覚醒剤事件について「驚いたか」と聞かれて「驚かない。そういうのもいるだろう」と言ったら、進行役が困った顔をしていた。

フジテレビ系「バイキング」より:編集部

ワイドショーなどでは、こうした事件でも自動車事故でも災害でも文書改竄事件のような不祥事でも、「そんなことが起きるとは」と驚くのがセレモニーである。しかし、起きる事件も事故も不祥事も災害も、さらには慶事にいたるまで想像もできないことなんて滅多に起きない。

私の人生でいちばん驚いたのは、大谷翔平の二刀流の成功で、次はトランプ大統領の出現かもしれない(20年くらい前の時点でということ)が、それとて想定外ではない。

大津の交通事故、東日本大震災、財務省の文書改竄などある確率で起きる話だし、その確率に見合った対策をとるべきだ。ところが、絶対に起きないと思っていたから対策とらなかったというのは、よほどのバカである。

そういう想像力や論理思考ができない人は、物事を論じる資格がない。そういうものに驚くなら、思考方法そのものを反省してから、議論に加わるべきだ。

それはともかくとして、あの事件について論じておく。

まず、28歳で課長補佐とかいうことで驚いているマスメディアが多いが、浪人などで遅れていないなら通常の昇進スピードである。キャリア官僚がとかいって驚くべきかといえば、インテリがそういうクスリに頼ることは確率としては凡人より多いだろう。

「公務員だからなんたることを」などというのも馬鹿げたことで、自分の仕事と関係ない分野でのことだからあまり関係ない。

東国原氏が決済にビットコインを使ってたから公務員の購入・売却を制限しろというようなことを言っていたが、そんなのはしたとしても金融庁だけでいい。ビットコインについていまさらそんな季節外れの議論しても仕方ない。

今回の事件について、これを官僚の堕落とかいう次元でとられるのは見当外れだろう。どこの世にも愚か者はいるし、現代の霞が関にもいることは想定の範囲内だ。

それではなぜ経済産業省でというなら、国際業務の比重が多いから海外生活や仕事を通じて情報にふれる機会が多いことは間違いない。しかも、国際業務は時差のある国との交渉が多いからこっそり夜遅く職場でというのはあり得ないわけでない。

しかも、最近の役所は訪問するのにも、いちいち許可がいる。しかも、経済産業省ではジャーナリストの執務室への出入りも今の大臣になって禁止した。機密保持の観点からは当然の配慮だが、その結果として、机の引き出しに入れたりしても露見する可能性は低くなる。

いずれにせよ、こういうことも可能性としてはあるのだから、すべてありうるという前提で対策をとるべきだ。とくに薬物についての問題は、国際化が進めば進むほど、外国で起きている事象は多くなるに決まっているのである。

もちろん、事故や災害でもそうで、滅多に起きないことに備えることにもコストを考えつつ備えることが当然のはずだ。