消費税増税は正しいのだろうか
最近の世論調査では、消費税増税に賛成される方が増えつつあるという感じの報道が見受けられますが、半数近くの方は反対の意見をお持ちであると思います。
私も、平成が終わる頃までは、経済指標などから、消費税増税については凍結すべきと思っていましたが、現在においては、今回の消費税増税についてはやむを得ないと考えています。
そこで、消費税増税への理解が進むことを期待して、何点か書いてみたいと思います。
①経済対策や追加対策で、短期的な悪影響は回避可能
まず、消費税増税の影響です。
税率は2%アップですが、恒久措置として、軽減税率の導入、教育無償化の拡大、自動車取得時の税金引下げなどもあわせて行われるため、実質的な物価水準では約1%程度の上昇になります。
また、この影響を緩和するために、ポイントの還元、プレミアム商品券の発行、住宅取得関連の減税などを期間限定で行うと共に、恒久措置である年金生活者支援給付金制度も開始されます。
こうした対策がとられますが、今後の経済指標などから、これでは不十分と判断されれば、追加の経済対策も必要となるでしょう。
その場合には、例えば、ポイントの還元の補助について、対象事業者の大企業への拡大や対象期間の延長を、補正予算により措置することを考えても良いかもしれません。
これにより、消費税増税による短期的な悪い影響は避けられるでしょう。
②消費税増税分の目的と使途を明確にすることが大事
現在は、消費税は目的税とはされていませんが、歳出予算において、その目的と使途について、国民の理解を得ることが大事であると思っています。
確かに、平成29年(2017年)衆議院議員総選挙において与党が公約した通り、幼児教育、保育及び高等教育の無償化を、限定的な内容ではあるが実施するように法制度が整えられました。
しかし、消費税増税分の使途については、地方自治体に配分される地方消費税の一部を社会保障分野に支出すると規定している以外は、明確ではありません。
ついては、この議論を国会などで行い、目的や使途についての何らかの担保を取っておくことが望ましいと思っています。
これにより、少しでも安心して消費税増税を受け入れることができるでしょう。
③益税と免税に関する制度改善で、国民が公平と思える制度へ
更に、国民の理解を進めるには、税率が上昇する過程では、いわゆる益税や免税に関連する事項を少しでも改善することが望ましいと考えます。
一つ目は、中小事業者に対する簡易課税制度における、いわゆる益税についてです。
簡易課税制度については、従来から検証を行い益税があまり生じないように、少しずつ制度が変更されてきました。
また、令和5年(2023年)10月のインボイス導入時までには、本制度を再検証することとされていますから、検証した上で、消費者である国民に説明していただき、必要となる措置を取っていただきたいと思います。
二つ目は、輸出免税に伴う消費税還付についてです。
この制度は、消費税率が上がるほど、その還付額は増えるという性格のものですが、輸出先では付加価値税が課税されるから、輸出元は免税として、主として二重課税を防ぐためにとられる措置です。
免税となると、売り上げに係る消費税は0円となり、仕入れに係る消費税をすべて還付してもらえるのです。
現在、日本からの輸出先である国や地域の多くでは付加価値税が課されていますが、アメリカや香港には付加価値税はありません。(ただし、アメリカの一部の州などには類似した売上税はありますが、付加価値税ではありません。)
そこで、付加価値税のない国や地域への輸出については、免税としないという考え方も一案としてあるでしょう。
しかし、輸出先の付加価値税の有無により、輸出免税に伴う消費税還付の有無を決定して計算すると、複雑な制度になります。
これは、非常に難しい課題ですが、少なくとも検討を行うことが望ましいと考えます。
こうした事項の検討を行うことにより、国民全体に公平な制度という認識が広がります。
終わりに
あと数ヶ月で消費税増税の時期が到来します。
既に、国と地方自治体の予算の執行、関連する法案や条例案の成立、ポイント還元の準備なども着々と進んでいます。
ついては、この段階における消費税増税の凍結は、混乱を生じさせる可能性もありますし、社会保障制度の安定のためにも、多くの国民に理解が進むように努め、予定通りの消費税増税実施につなげていただきたいと思います。
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森川 将志 フリーランス
大きな組織を退職。今は個人で。そのかたわら、東南アジアの政治についても研究中。
おしらせ:「消費増税に賛成?反対?」の原稿を募集中です
アゴラでは5月、「消費増税に賛成?反対?」をテーマに原稿を公募中です。
自民党の萩生田幹事長代行が4月18日、インターネットテレビで10月の消費税増税が延期される可能性に言及。安倍首相の側近である萩生田氏の発言の真意を巡って憶測が広がり、永田町やメディアは衆参ダブル選挙のシナリオも含め、連休前の政局が緊迫しました。萩生田発言の後も、政府はリーマンショック級の事態がない限りは増税の方針を堅持していますが、超高齢化に伴う社会保障コスト増大は避けられません。果たしていまの日本は増税すべきなのか?皆さんのご意見をお聞かせください。
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