令和で「昭和」を終わらせるためのカギは?

鈴木 寛

令和への改元は八ヶ岳で迎えました。東大教養学部の学藝饗宴ゼミの学生たちとの合宿でした。東京よりも肌寒かったですが、落ち着いた環境と、澄み切った空気が心身をリフレッシュし、学生たちと、藝術と学術を駆使して、新たな未来を提示する、ワークショップを行いました。高倍率のゼミ選考を経てきただけあって、すずかんゼミ生たちは本当にクリエイティブです。

RRice/写真AC(編集部)

一方、東京都内の連休中は、さながら“今年2度目のお正月”といったムードでしたが、お祭り気分にいつまでも浸れる余裕はありません。この欄で以前も書きましたが、平成の30年間、昭和型の社会システムをアップデートしきれないまま迎えた新時代です。

平成終盤、平成元年(1989年)と平成30年(2018年)の世界の時価総額ランキング比較が話題になりました。元年当時、世界の上位50社のうち日本企業は32社も入っていましたが、時が経ち、上位にはGAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アマゾン)をはじめとするアメリカ企業が多くを占め、中国勢が対抗馬に浮上。日本勢はトヨタ自動車が41位にランクインするのがやっとという「凋落」ぶりでした。

デジタルエコノミーに移行していく中で日本企業が産業転換に遅れ、一方で、経済至上主義を超える新たな価値観の提示もはかばかしくない現実は、凡百の専門家に言い尽くされた通りです。今は、その理由を突き詰め、変えていくことの方が重要です。

近年の政治報道で「岩盤規制」という言葉が注目されています。既得権者が既存のルールを固守し、新規参入による健全な競争やイノベーションの創出を阻害する有様を言い表しています。既存のタクシー業界の影響力が強く、先進国で唯一、ウーバー等のライドシェアが実現しないことがよく引き合いに出されます。

ただ、「岩盤規制」は、国の経済政策、企業の経営戦略の視点で語られますが、消費者、生活者、就業者一人一人の「実は変わりたくない」マインドも意外に“岩盤化”しているのではないでしょうか。

世界的にキャッシュレスが普及する中で、いまだ現金主義が幅を利かせているところは一例かもしれません。若い人はスマホのキャッシュレスアプリを使っているという反論はあるでしょうが、その彼らも留学や海外勤務に後ろ向きで社会のグローバル対応に不安を残します。

このマインドの背景には、社会人になってからの学び直しの不足があると思います。新たな真理、概念、知識、手法を学べば、それらを試し、それらを使って世の中を変えてみたくなるはずです。

働き方改革で生まれる自由時間を学びの時間にしましょう。昭和期の成功体験に基づいた“岩盤マインド”を令和の早い時期に、どこまで払拭できるか。「新 学問のススメ」の成否に日本の命運がかかっています。

鈴木 寛  東大・慶応大教授、社会創発塾塾長
1964年生まれ。東京大学法学部卒業後、通商産業省に入省。山口県庁出向中に吉田松陰の松下村塾に刺激を受け、人材育成の大切さに目覚めて大学教員に転身。2001〜2013年、参議院議員(2期)。民主党政権下では文科副大臣などを務めた。政界を離れてから東大・慶応大の教授を史上初めて兼任。2015〜2018年、文部科学大臣補佐官を4期務め、アクティブ・ラーニングや大学入学改革を推進した。社会創発塾公式サイト

編集部より:このエントリーは、TOKYO HEADLINE WEB版 2019年5月13日の掲載の鈴木寛氏のコラムに、鈴木氏がアゴラ用に加筆したものを掲載しました。掲載を快諾いただいたTOKYO HEADLINE編集部、加筆いただいた鈴木氏に感謝いたします。オリジナル記事をご覧になりたい方は『鈴木寛の「2020年への篤行録」』をご覧ください。